『氷の城壁』に対するお気持ち表明(感想文)

※去年の12月に書いていたものが下書きに残っていたので放出してみます。

広告とTwitterのフォロワッサンのおすすめにより『氷の城壁』を読みました。
実を言うと以前読んでいたことがあった(しかもその時点でわりと刺さっていた記憶がある)のですが、アプリの仕様が肌に合わなかった&機種変更に伴って漫画アプリを開かなくなってしまったために途中でコースアウトしてしまっていました。今回は違うアプリで読み始めました。
超絶後悔〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!
「『氷の城壁』?知ってるよ、ずっと連載追ってたんだよね」って鼻高々に言いたかった……(最悪の感想)読めば読むほど大好きになっていく……。加速に次ぐ加速で初めて漫画アプリに課金をしました。読破した今、クソデカ感情お抱えオタクになってしまったので、お気持ち表明をさせていただきたく筆を執りました。私は人並みに漫画が好きですが、ここまで刺さったのは久しぶりです。紙の本になってくれ……。

⚠︎ネタバレを含みますのでご注意ください。

70.5話のおまけのQ&Aでの「どのキャラが1番好き?」という質問に対する阿賀沢紅茶先生の「全員他人と思って遠めに見守ってます」「いい意味でも悪い意味でも平等に」という回答が印象に残っています。読めば読むほど、それが伝わってくる漫画でした。
(『氷の城壁』が少女漫画という区分で正しいかはさておき)「少女漫画の主人公」という理屈だけで、まっすぐで素直でちょっと鈍感な主人公という人間性が形成されることに違和感を覚えるひねくれた人間なので(まあそれはそれで好きな場合もあるのですが……)、こゆんが持っている価値観やその変化にちゃんと「背景」を感じられたのがとってもよかったです。主人公だからといってスーパーマンじゃない。主要キャラクターもサブキャラクターも等しく善と悪を抱え込んでいる(善/悪しか描かれていないキャラクターもいますが、そこに「主要キャラクター/サブキャラクターだから」という贔屓がない)印象を受けました。
キャラクターに事務的に属性をあてがうのではなく、それぞれが歩んできた人生の上で現在の性格・行動が形成されているという事実がそこにありました。アプリのコメント欄で主要キャラクターに批判が飛ぶ場面も、(主人公の恋路を悪意を持って妨害するタイプの)恋敵の女の子に共感の声が上がる場面も、他の漫画で全く見ないことはありませんが、ここまでたくさん目にする漫画はなかなかないと思います。それが、一方の価値観に偏らず公平な視点で描かれている証拠だと感じました。主人公もサブキャラクターもみんながそれぞれ自分の人生の主人公で、他人の人生の主人公にはなれないのだと実感します。近くても遠くても、理解し合えない部分があるのがよかった。
どんな媒体でも、心情の変化に説得力があり、物語に描かれていない時間にもキャラクターの生活があることを実感させてくれる作品が好きです。

コマ割りが上手すぎる。文字のビジュアル表現が上手すぎる。言葉の選び方が上手すぎる。表情の描きわけが上手すぎる。絵がかわいすぎる。人間が抱える感情の解像度が高すぎる。私が日々生きているなかで抱えるぼんやりとした塊に『氷の城壁』を通して輪郭が与えられていきます。
キャラクターの表情から見える感情、行動から読み取れる感情、モノローグから聞こえる感情、その全てに説得力があってグッと来ました。さらには、その感情を描くまでのストーリーの流れに違和感がなく、そこにあるのはキャラクターが生きている事実。
正直な話、私は縦読みがあまり得意ではないのですが、『氷の城壁』のコマの間のリズム感には呼吸に寄り添うような自然さがあり、いつの間にか縦読みへの苦手意識を忘れて没入していました。

(まともな恋愛経験があるのかと問われたら微妙なところですが)恋をしたら「おはよう」と「またね」が自分に向けられることに言葉にならないときめきを感じるなあと思います。98話「移り目」、ヨータの「また明日」のセリフで美姫の顔が隠れているところ、味わい深すぎる。ここ以外にも表情が見えないシーンが多々ありますが、表情が見えないというのは無限ですね。「また明日」という言葉の威力が強くて美姫に直撃しているような印象も受けます。

雨宮湊さんに、言いたいことがあります。
ネガティブミナトタイムのときに、自分の行動は人のためではなく自分と弱さだと自覚しましたが、それだって受ける人からしたら間違いなく優しさだと伝えたい。私は中学生のとき間違いなく「刺される側」でしたが、そんな私にも平等に接してくれるかわいくて朗らかな人気者がいました。もしその子の優しさが「自分が刺される側になりたくない」という動機から来るものだったとしても、私がその子に救われてきたことは変わらない事実です。
まあ似たようなことこゆんが伝えてくれてたね。こゆんにこれからもたくさん伝えてもらいなね。

ある意味、桃香が97話「放免」で言っていた「次はもっと自分のこと好きでいられる恋愛する」がこの物語の芯なのかな。これを桃香が言っていることが切ない。みんなみんな幸せになってくれ〜〜〜。

外への出し方に違いはあれど、こゆんとミナト、根っこが似ている気がしてときめきですね……。お互いが「踏み込んだ」ことよりも「踏み込ませた」ことのほうが二人にとっては大きいんだろうなあと思います。もう、こゆんがかわいすぎて……かわいすぎてかわいすぎて…………私が雨宮湊でも(?)こゆんに恋してしまうな……。お幸せに…………。
2〜3話には美姫とこゆんが廊下で目が合ったとき「話すことがないから」という理由で無言で通り過ぎるシーンがあります(美姫は地味にショックと語っている)。そんなこゆんが最後のほうはミナトと目が合った(というか目が合うまで見てくる)ときに笑顔で手を振っていて、その変化がじんわり響きました。
こういった変化の対比が緻密に描かれていて、何度も読み込むことでさらに深く味わえる作品だなあと感じます。

書けば書くほどお気持ちが止まらない。他人と不幸を比べてこんなに小さなことで悩んでいるなんて情けないんだろうなって気持ちを押し込めちゃうところとか、属性で判断されてしまうことの難しさとか、自分のなかでぐるぐる絡まった感情を紐解こうとしているうちに無言になっちゃう感じとか、エトセトラエトセトラ……こういうひとつひとつに悩んで立ち止まってもいいんだよ、って言ってもらっているみたいで何度も涙が出ました。こゆんたちは立ち向かって乗り越えられたこと、これから一緒に乗り越えていくこと、さまざまです。私が自分と向き合って乗り越えたいと逃げたいの間で潰れそうになったとき、この漫画を読み返して顔を上げるような、そんなお守り…………にしたいので紙の本、懇願。

p.s. うれしさはみ出しダンス、すき。

おしまい。

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