「劇」っていうなよ~演劇人あるある~

さて、演劇人あるある第4弾です。今回も演劇人が言われてモヤっと来るワードを、その理由とともに書いてみます…。が、今回のモヤっと来る理由は僕自身もよくわかってないんです。その理由をあれこれ考えながら書いてみようと思います。

今回のワードは、「劇」です。
自分を演劇人だと知っている一般人(あくまでも、演劇人にたいしての便宜上の対比だと思ってくださいね。)から、紹介される際によく発せられる言葉なのです。
「彼ね、劇やってる人。」
このね、「劇」、ってワード。
何故か、来るんですよ。モヤっ。

これちなみに一般の人に言われたらモヤっとしつつスルーなんですが、演劇人(はじめたて)が言うとめっちゃ詰めます。
「お前素人じゃないんだから劇っていうなよ」と。
演劇人は、自分たちがやっていることを、「芝居」と呼びます。ちなみにこの「芝居」という言葉、演劇そのもの、演技、公演も包括する結構広い言葉です。
一般人に対して名乗るときは「演劇」と言います。わかりやすく。でも、「劇」は名乗らないんですよね。
中高演劇部生はおそらくこの「劇」に対する拒否反応はないと思います。大学演劇生はどうだろう。サークル感の強いところはそんなに拒否反応ないんじゃないかしら。

ところが、社会人になって演劇を続けるようになると、この「劇」に対する拒否感が増して、「芝居」に対するプライドが勝ってくるんです。本当にいつに間にか。

ちなみに調べてみると、「芝居」は日本の舞台表現、猿楽や田楽が起こったころからある言葉だそうです。芝の上に座ってみたところから、「芝居」だそうで。農村歌舞伎堂なんかも客席は芝ですもんね。

ちなみに外国の言葉で演劇ってなんていうのか。
中国語では戏剧(xiju)シージュー。これ日本で使われている漢字に直すと戯劇、です。戯れる劇、ですね。
英語はplay、またはdrama。Playの語義はもちろん遊び。今日われわれが劇的、演劇的の意義でとらえるDramaは語源を調べてみるとギリシャ語の「行為」という意味に由来するそうです。演技がact(行動)であることを考えると、英語における演劇って「する」という意義が強く残ってるんですね。
あ、そういえばちなみに劇場から来ての言葉でtheaterもありますね。
英語における「劇」と「芝居」みたいな関係ってあるのかしら。それは今度じっくり調べてみるとして。

この言葉のこだわりの理由として、誤解を恐れずに言うのならば、演劇はなんでも表現できる、ということがあるのではないかと思うのです。
演劇って歌も、音楽も、踊りも、朗読も含まれちゃいます。楽器だって出てきます。オールラウンダーであるがゆえに、これに特化してる、という「よすが」がないんです。
だからもしかしたら僕たちは表現の草々期から続く「芝居」という言葉を使うことで、我々は表現者であるということを誇っているのかもしれませんね。

でも一般の方、「劇」の方がわかりやすいですよね?
「芝居」と言われるより舞台の上で人が台詞をしゃべっている、というイメージが明確に浮かぶと思います。
これ、中高の生徒会劇や文化祭の出し物としての演劇の印象じゃないかしら。
「今回の文化祭の出し物は、喫茶店、合唱、劇のどれしますか?」みたいなHRでも、表記上演劇の「演」はなかった気がしますし。

「劇っていうなよ」と言いながら、
実際見に来ていただく、ぜひ見に来てほしい新規ユーザーは「劇」の認識の人なんです。
僕ら演劇人、どっかでこの「劇」を受け入れる必要があるんじゃないか、と思う今日この頃なのです。

あ、ちなみに、ホントにそんなハードルの高いもんじゃありません、「劇」って。テレビドラマや映画見るのとおんなじ気軽さでお楽しみいただけます。ぜひ見に来てください。「劇」。

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