季節の頬

目が覚めれば
カーテンの隙間から差し込む
朝日が刃のようで

切り裂かれそうな喉で
横たわったまま小さく歌う
ああ
この幕を開けずに済むものならば

毎朝の道路は優しくない
碁盤の目と呼ばれるこの街の
東西を貫くアスファルトに
影は見当たらず
もしいま後ろを向けば
太陽はとっくに準備万端の顔をして
熱で背中を押すだけだろう

だから振り向けないまま
ランウェイを走り抜ける
風を想像しながら
わずかな日陰を求めて道の右端を歩く

やがて空が頬を染めて
雲が青い影を曳く
走らなくても川沿いには風が吹く
太陽が傾くのを
モニター越しに待っていればいい

帰り道
スーパーで見つけた
あかるい枇杷の実を両手で掲げる
ほんのすこし腐れた果実の
18時に見切られたにおいを嗅ぐ

振り向いた肩の上
街灯の明かりと梢の影が
揺れるその間で
見つけたばかりの季節が笑っている

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