多分もう会えない人の話

「もう会えない人」っていうのはなにも亡くなった人だけではないよね。会いたいけど会えない人っていうのは色んな人に存在する気がする。

というそんな話です。

中学生のとき、当時14歳。熊本に住む父親(すでに両親は離婚してわたしは母親と東京に住んでいる)に彼女ができた。当時父38歳。彼女はなんと18歳。

父は人材派遣の仕事をしており、自分も現場に入る人だった。大人になったいまでこそわかるけどだいたいそういうところの支配人とかマネージャーって死ぬほどかっこよく見えてしまうのはよくわかる。

けれど「父が娘と変わらない歳の子に言い寄られるなんて…絶対に貢がされる!!!」と全力で心配した。父は人類稀に見るダメな大人なのでそんな心配はすぐになくなったけど。

毎年熊本にいっていたわたしは、その彼女のことをかなり警戒していた。とんでもない女なのではないか。あとちょっとあの父と付き合うって大丈夫なのかな。絶対普通の人じゃないだろ。とか。

でも会ってみると、彼女はとんでもなく可愛い子だった。背が高くて、スタイルがよくて、目がくりくりしていて、かなり明るい髪なのにしっかりとした喋り方でいい加減さが少しもなかった。

4歳しか変わらない彼女は既に社会に出ていて、「4歳しか」と思っていたのが嘘のように大人に見えた。そのとき急に娘というだけで見ず知らずの人間を見下すような気持ちを持っていたことをとても恥ずかしく思ったのを覚えている。

父親は娘を言い訳に結婚を拒み、結局ふたりは別れてしまったけれど、恨まれて然るべきの私に最後まで「いなければよかったなんて思わないで」「出会えてよかった」「大好きだよ」と言葉をかけて手紙を送ってくれた彼女のことを未だにときどき思い出す。

わたしはあのときのあなたの歳をとうに超えてしまいましたが、バツイチ子持ちの男性を愛し4つしか変わらない子供を一緒に愛せるかというと、まあ無理です。

なんとなく、もう会うことはないのだろうけど、どこかで幸せに暮らしていてほしいな、と思っています。

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