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番外編・杯を捨てて街に出よう

転職先の入社日を前にして、無職の自堕落生活が板についてきました。そろそろ社会復帰をしないといけないなあと思うOLです。
OLはO(お仕事してなくってもよくて)L(ラッキー)の略です。

新しい職場へと行く前に、前の会社の最後の納会の思い出しでも書いておこうかと思った次第です。タイトルがちょっと極端な気がするんだけど、要は気に食わない飲み会には出ないほうが楽しかったりするな、という備忘録でオチはないし、結局はただの前の会社の愚痴なんだと思う。

3月末の期末には決まってその一年の働きをねぎらう納会があります。
もう既に会社を辞めることになっていた私も含め、基本的に社員は全員、最初の乾杯には参加することになっていた。会社の飲み会というものはシンプルに好きじゃないので、乾杯の後、どうやってその場を抜け出すかを考えていた。

「納会、すぐに切り上げてお買い物にいきたいんです」
ファッキン弊社のファッキン荒野に咲く一輪の良心こと、パイセン(一個上の女性)がこっそりわたしにそう告げたとき、納会参加と天秤にかけるまでもなく「あたしも着いてっていいですか?」とお願いした。

納会を二人で抜け出すのは思っていたよりもとても簡単だった。お疲れ様で~すさようなら~なんて2人で言ってしまえば周りも止めにくいらしくて、するっとビルを出て、電車に滑り込み、銀座に向かった。GUに行って、それから閉店ギリギリの銀座インズにも行った。

夜の銀座って、百貨店が閉まった後でも明るくてキラキラしていて本当にきれいで、楽しいよね。長野の山奥から出てきた田舎者だから、いつもそう思う。
パイセンと、GUで試着した服のサイズ感がとっても似合ってますね、だとか、買いもしないシャツの柄をかわいいかわいいと囃したりだとか、合間あいまに「何で仕事しなくちゃいけないんでしょうね」「ね」なんて言いあうような、たいした実を結ばない、かわいい会話をしながらうろうろと歩いた。そういう会話は目の前でぱちぱちとはじけて光っているようで、会話がぱちぱち弾ければ弾けるほど、飲み会の記憶は遠ざかっていった。

会話の端々でパイセンが、「OLさんが会社に入ってくれてよかった」とつぶやく。そうすると、昔男性の先輩社員が言い放った、「女子ってさー、そうやって仲良さそうにして本当は嫌いなんでしょ?ほんとのこといいなよ」が脳裏をよぎる。
パイセンが「△△マネージャー、またきっと他の社員さんにキツイ冗談を言うんだろうな」なんて遠い目をする。そうすると私は、パイセンが過去受けたセクハラのことを思い出した。男性上司はしたり顔で言った。「あの子はセクハラされてもしかたないところがある」。なにをいってやがる、このすっとこどっこいカンパニーが、と思ったことも思い出す。

いるよね、女子ってだけで仲悪いってことにさせたがるおじさんたち。連帯を笑って、無いことにしたいおじさんたち。勝手に、若さと見た目をジャッジして、笑っていいと思っているおじさんたち。
それって面白い?まさかだけど、それがご自慢のコミュニケーション能力?
入社したての頃はそれでもグラスを持たないといけないんだと思った。つぎたくないお酒と浴びせられたくない会話の中に居なければならないと思っていた。

そういう、いまだごく一般的な日本企業あるあるファッキン弊社のファッキンおじさんコミュニケーションが横行する地獄のなかで、パイセンがいてくれたことは私の救いでおそらくパイセンにとってわたしが救いだった(と思っている。)

まあ多少お酒の場が良い効果を生むことも時折ある、ということは分かるけれど、すっとこどっこいどもが!と思いながら飲むならば、その飲みの場にはまったく意味はない。

今なら言える。新卒の私とか、パイセンとかに。
気に食わないグラスは捨てて街に出よ。素敵だと思う物事を見聞きせよ。

お買い物のあと、お茶をしながらふとざまあみろ、と思った。別に何か恨んでるわけじゃないけれど、ざまあみやがれと思った。隣を、洋服の入った袋を抱え、ほこほこと喜ぶ先輩が歩いている。コーヒーを飲んで穏やかに笑っている。あなたたちのつまらない杯を受けなくったって、私たちにはこんなに楽しい夜があるのだ。

「会社の人たち、まだ飲んでるんでしょうか」
「飲んでんじゃないですか」
「今日が納会だったなんて嘘みたい」

ね、本当にそう。

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