過去でも未来でもなく、今だけに刻む

それは反撃の狼煙か、それとも世界への咆哮か。

2020/a flood of circle


ロックバンド然としたロックバンドの、凄まじく格好いいアルバムでした。

なによりも、M01『2020 Blues』からM03『ファルコン』に至る火力がやばい。攻撃力に全振りした武器にぶん殴られているみたいな衝撃を受けました。上手いこと言ってやった感を出すとか、耳馴染みの良い言葉で共感を得ることに重点を置かれがちな現代において「うるせー知るかこれが俺たちだ!」みたいな姿勢でいるのって、すごく大変で強い向かい風を受けることだと思うんだけれども、それでもその姿勢を貫く生き様こそ、わたしが憧れるロックバンドでアーティストで、この冒頭3曲はそれがど直球で飛んできた。

その後に続く曲たちも、徹底的に”今”をフォーカスしていて、常にここからだと決意を示している。そこに共感が入る余地はなく、ただ彼らのスタンスを示されていて、世界に対する宣戦布告を聴いている感覚になる。そしてリスナーは共謀者になるのだ。

さらに言えば、バンドサウンド以外の楽器が入らないシンプルな構成だからこそ際立つ演奏や歌の力がその謀への誘いを増幅させる。単純なもので人を惹きつけて離さないっていうのは技術力がすべての世界なので、それで戦うという意思表示も含めて「ロックバンドだかっけー!!」に帰着する。

聴き進めていくほど、心の奥深くの何かにそっと火を灯して明るく照らしてくれる感じがします。ほんと夜明けだよ。新しい物語を紡ぎ続ける、それが生きるということだと、”今”なんだと、全編通して徹底してそれだけを表現している。

こんなの、もう惚れる以外にどうしろと言うんだ。

2020ほんとすげえなマジで。友人が強く盤推ししていた理由が分かった。これは盤推ししたくなる。全人類、聴くなら全部聴いて。1時間だけでいい、どうかそのお耳を貸してください。

表現者って、本来は世界が求めてることに沿ってモノを出すのが生業ではない生き物なので、どこまでも他人を無視した、自分勝手なのがあるべき姿だと思っているんですよ。表現って行為は「自分の中にあるものを出す」というそれだけで成立する行為で、その行為をした人間はおしなべて【表現者】になるわけだから。もちろん現実には、ビジネス的に消費者丸無視では立ち行かないとか飯を食わなきゃいけないとかの大人の事情が、それはもううんざりする程たっくさん転がっているんですが、それでも迎合しすぎるのは違うというか、その大人の事情に目指す表現を潰されるのはダメだと思ってて。

そのあたりの曖昧と清濁を全部「自分たちの意思」に包みこんで表現しきるっていうことを、えげつないハイクオリティでやっているのがこの2020というアルバムだと思います。そしてそれを作り上げたa flood of circleというバンドの力量も十二分に示されていて、しかしこんなもんじゃ終わらないと宣戦布告もされている。だからこんなにも格好いいと映り、惹かれるのだなぁと。

佳い出会いをまた一つ重ねられました、ハピネス!!✌︎('ω'✌︎ )

おまけ:わたしは『人工衛星のブルース』を聴くとBUMPさんの『ベル』が脳内再生されてしまうんですが(一部分だけメロディーの動きが似てる箇所がある)、これについて同志を探しています。お心当たりのある方はぜひよろしくお願いします(?)。

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