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嫌いな声

自分の声がコンプレックスだった。初めて動画に入ってる声を聞いて普段自分が聞いている声との違いに驚いたという経験は多くの人が共感してくれるだろう。
普段自分の耳に聞こえているのは空気を通した音と骨伝導による音が混ざった音で、他人に聞こえているのは空気を通した音だけだから差が生じるということらしい。
普段自分の耳に聞こえている声は聞き慣れているから好きとも嫌いとも思わない。しかし、他人に聞こえている自分の声は聞き慣れていないからなのか大嫌いだった。
動画等に自分の声が入っているのが堪らなく嫌いで、できるだけ聞かないようにしてきた。だが、友人と素人なりにラジオをやってみようと言うことになった。録音して友人が編集してくれた。企画自体は楽しみだったのだが、自分の声を聴くのは不安だった。とはいえ、友人が編集してくれたわけだし、聴くしかないと腹を括り聴いてみた。
すると、驚くことに自分の声を聴いても気持ち悪いと思わなかった。久しぶりに聴いたけど、俺ってこんな声に聞こえてるんだ。そう思うだけで嫌いだとは思わなかった。好きでもないが、それでも嫌いではなかった。自分の声に対するコンプレックスが消えた瞬間だった。
ずっと曲を作ってみたいと思っていた。しかし、自分の声がコンプレックスだったことと、最後まで作る前に行き詰まってしまうことが原因で諦めていた。だが、声に対するコンプレックスが消えたことで最後まで作ってみようと思い、制作を始めた。1番の歌詞を考え、思い浮かんだメロディーに乗せて歌ってみた。録音を聴いて、そっと音声を消した。
どうやら、歌声はまだまだ嫌いなようだ。

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