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世紀末ガール


やっと最近になってこめかみの辺りから首にかけて汗がつたう感覚に慣れてきた。

気温が一気に高くなる/低くなる季節は飲食店の売り上げが落ち込む閑散期、数字で言うと2月・8月。それらを合わせて「ニッパチ」とはよく言うが、暑さが前に傾れ込んだせいか7月は静かだった。

顔には出さないが明らかにマスターが落ち込んでいるのが分かる。いや、マスターだけじゃない。夜の街全体が鬱屈した雰囲気を漂わせている。

「こうも暑いと外出ないですよね、もしかしたら『ニッパチ』の8月が7月に置き換わってるのかもしれないスよね!」

気休めを言うつもりは全くない。ただなんとなく、努めて明るくしようとは思った。

「暑さに慣れてきたら、8月は盛り上がるんじゃないですか?」

そうやなあ、そうなるといいなあ!と明るい返答が返ってくる。日々の営業でイライラした素ぶりなんか絶対見せないし、スタッフに対しての口調も極めて穏やか。ただ営業終わりに飲むお酒の量が増えているような気も....増えている。

「水商売」とは本当に良く出来た言葉だと思う。環境や時代、景気にも影響され、日々の売り上げが月の売り上げとなり収入と直結する。そんな不安定な様子を水に例えた〜だとか水のように元手がかからないから〜だとか。まあそんなことが書かれているが仕組みは至ってシンプルだ。お客様が来なければ収入はない、それだけ。

(自分でお店やるってストレス半端ねえよな〜、ヤダな〜!)とそんなことを思いつつも明るい未来を思い描いている自分がいる。楽観的すぎる?いや、そうならないとどうしようもないんだよ。周りから見れば、はたまた自分から見ても(冷静になれば)、精神的に強い訳ではない私がそれに耐えられるのかと思う。でもそのコンマ数秒後には耐えてみせるサ、と語尾をカタカナにできるぐらいで生きていかなきゃなんない。

足を踏み入れたのは華やかなようで地味、排他的なようで寛容な世界。既に両膝まで突っ込んでいるし、そうでなくとも引き返す気など更々無い。

ただ、私は感情的に動く癖にとっても慎重派なので自分の中でルールを決めて注意深く進むつもりである。

口は災いのもと。カウンターの中でも外でも要らぬことを言わないように常に気をつける。知識をつけて経験を積んで爪を磨ぎながら虎視眈々とタイミングとチャンスを狙う泣く暇があるようならまだ序の口。ギリギリまでやってやんよ!まだまだ歩ける、ずっと進みたいから走ったりはしないけどね。

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