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〈純喫茶巡話〉#2 喫茶エデン


今日は久しぶりの休み。

...じゃない、仕事だ。危ない。
いつもよりニ時間出勤が遅いだけでついつい休みをもらったような気分になる。連勤の日数を数えなくなったし、社畜の才能が開花しつつあるな。こうなったら満開まで咲かすか。

ということで今日はこのニ時間をフルに使う。

少し早めにセットされたアラームを止めて、一仕事終えてから、休日のような気分で家を出る。

眼鏡屋。
古着屋で見つけた黒縁の鯖江眼鏡、カラーレンズ入り。お気に入りだけど私の顔が小さすぎて少し合わなかったので調整してもらった。自分で言うなと聞こえてきたけど流石にこの24年間で5億回ぐらい言われ続けたら誰でも肯定するようになる。

美容院。
あんなに派手髪が好きだったのに今は黒髪が一番落ち着く。今回は本気で髪の毛を伸ばすんです、と美容師さんにn+1回目の宣言をして店を後にした。

映画館。
湊川駅から徒歩三分の場所に位置する「パルシネマしんこうえん」。2021年元日に50周年を迎えた歴史ある名画座だ。
今日は映画を観るのではなくて前売り券を買う。
お目当てのチケットは
【ゴッドファーザー3部作一挙上映】
休憩を挟みつつ三部作を連続上映するらしい。
朝の十時半から始まって終わるのは二〇時四十五分。十時間ほど映画館で過ごすことになる。
これが二十四歳独身女(彼氏/貯金無し)の遊び方だ。

さて、今日やりたかったことは大体終えた。
まだ仕事までニ時間あるな。
よし、喫茶店へ行こう。


パルシネマしんこうえんから新開地駅の方へ移動し、「喫茶エデン」へ。

60年以上に渡り街の人に愛され続けている、創業1948(昭和23)年の純喫茶。
阪神・淡路大震災を乗り越え、創業当時の佇まいを残す神戸では数少ない貴重な空間。

店内は船のキャビンのようなつくりで、歩くと軋む床がより一層船上を感じさせ、朱色に金色の刺繍を施したソファーが優雅な雰囲気を漂わせる。

入り口近くにサンドイッチが置いてあった。
値札は見ていないが、綺麗な三角形のサンドイッチが売られていた。

そのまま一番入り口近くの席について、アイスコーヒーを注文した。

シロップの入れ物が醤油差しなのが良い

火曜日の十五時。地元の人らしきお客さんが代わる代わる入ってくる。

しまった煙草を忘れてきた....
副流煙で我慢するか....

それにしても6月後半だというのにもうすっかり夏だ。うだるような暑さから避難して、決して冷えすぎてはいない店内で冷たいコーヒーを飲む。



「あいみょんに似てるって言われない!?」

お会計を済ませて出ようとした矢先、奥様に話しかけられた。


『あ、あいみょっ!?....は言われたことないですね...』

「あいみょんにすごく似てるわぁ!アッでもあいみょんに似てるってあんまり嬉しくないかしら、そうじゃなくてね、すごく可愛い!
...本当に似てるって言われたことないの?」

どうやら褒めてくれているらしい。

『アッありがとうございます...今まではなかったですけど、今日髪の毛を暗く染めたのでそのせいかもしれないですね』

奥さまはまたいつでも来てね、と言って素敵な笑顔でお見送りをしてくれた。
店の扉が閉まる直前「本当に似てるわぁ...」と小さくつぶやいたのが聞こえた。

あいみょんか...似てるとは全く思わないけどそういえば小松菜奈とあいみょんが似てるって言われてるの見たな。ってことはつまりあいみょんに似てるってことは小松菜奈にも似てる可能性があるってことか?なら最高の褒め言葉だな。
あぁ暑い。小松菜奈になりてえなあ。

などと考えながら、かつては花街・福原遊郭があったはずの、今では一角に寄せ集められたように立ち並ぶ風俗店のある街を横目に、今日も仕事へ向かう。

「喫茶エデン」
📍新開地駅の近く
営業時間 8:00-18:00
定休日 無
🚬喫煙可

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