「ティルナノーグと刻の歌」Traumerei Fabrik 感想。

2021年にもなって2015年のアルバムについて書くのは申し訳ない気持ちもしつつ、やはりこのサークルが5年越しで出した「ティルナノーグと永遠の歌」が傑作だったというのもあって、ある種前身となるこの作品とはきちんと向き合いたいと思いまして。
ちなみに作品自体は2019年に入手していたのですが、それから2年経ってやっと感想書くのは、入手の際に秋晴君に「僕の就活の闇が詰まった作品です」って言われたからです。そのイメージを払拭してからじゃないと書けないよね。

という訳で、以下感想。

このサークルの作品をタイムラインで追っていくと、おそらくその後に鳴らすサウンドの基礎が出来てるのがこのアルバムなんじゃないかな、と。初期はもっとハードロックとかメタルに寄っていたのが、この作品では完全にそこに留まらないというか、全然違う音。
フュージョン的な色を帯びつつも疾走感の強い音で、根底にロックはあれど表現の幅が広がって色んなアプローチをしつつ、でも目指す場所はある程度明確にあるというか、向いている方向は多分どの曲も同じという感じなのは、この作品がコンセプトアルバムだからでしょうか。

個人的に気に入った楽曲は1曲目の「海底都市の視る夢」、冒頭のアコギの落ち着いた刻みから煌くような鍵盤が入って来て、じわりじわりと盛り上げていく爽やかなロックアレンジ。1曲目としてはとてもワクワクする、素敵なアレンジじゃないかと思います。

また、4曲目「水面上のアステリズム」は数少ないメタル的なクリシェが使われているアレンジ。ジャジーなピアノが鳴ったりしつつ後半で、ツーバスがドコドコ鳴っているのに、爽やかに駆け抜けるっていうアプローチはこんなやり方あるんだ、というとても面白いアレンジでした。

あと7曲目のタイトルトラックはダークさも漂うジャズロックという感じのアプローチでしょうか。結構強烈な変拍子になってると思うんですけど、カッコ良く纏めていて凄いなー、と。2分過ぎからのパートはジャズらしさの出てるリズムが特に良かったです。こういう間を演出するのは打ち込みだと大変だと思うので。また、3分半ぐらいのブレイク明けで入ってくるピアノが切なさとか色々重みというか、作品のトーンを背負ってる感じがしてこの曲をタイトルトラックにするのは凄い納得感というか。

おそらく、「ティルナノーグと永遠の歌」を聴いてライナーノーツを読んだ人ほど色眼鏡を外して接する必要がある作品だと思います。
本人たちが思ってるほどやり切れてないとは思えない。しっかりコンセプトアルバムになってる作品だと思います。
あと、この作品のアートワーク最高ですね。DLカードという形態の良さを活かしまくった感じが素敵。

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