2020年の東方ポストロックについて

とりあえず、今年はこんな記事を書いてしまったことですし、東方ポストロックというニッチなジャンルを振り返るのもいいかもね、ってことで書いてみる。

参考までに資料的なアレ。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1yyYNtSJ3arsWSMr2s8y0YHxkTb_m8QioWdenp8P6qD8/edit#gid=0

前回の記事での最終更新以降に追加したものは色ついてます。

そんな訳で、2020年は実質コロナ一色でその影響は当然東方ポストロックというニッチなジャンルも例外なく受けていたと思われます。
そりゃ当然即売会自体が多数中止・延期を余儀なくされていますし、即売会への参加という地域の移動を伴うハードルも高くなっていることから、参加を見送るサークルも増えています(私も参加を見送ったサークルの一つ)。
そんな訳で、今年の東方ポストロック作品は4つと寂しい結果になっていますが、個々の内容を見ると数少ない作品がそれぞれのサークルの充実度を伺わせるものになっていて、非常に面白かったのではと思います。以下、今年作品を頒布したサークルについて。

・深夜放送

https://www.youtube.com/watch?v=SIkQu5kLxEQ


元々、ポストロックというよりはオルタナだったりエクスペリメンタルだったりノイズロックに近いサークルで、マイペースに作品を制作されてるが東方アレンジサークル全体で見てもかなり少ないと思われる春の例大祭合わせで5曲入りの「あなた」を頒布している。
ぶっ壊れた様な音のファズギターが突然挿入されたり、ジャジーだったりマスっぽいフレーズが挿入されたりと毎度楽しんで作られているのだろうな、と感じさせるサークルですが、今回の白眉はTr.3辿る間にが特に良いです。ノイズだけど空間性もあってだけどシューゲイザーではないという絶妙のバランス。多分この音はこのサークルにしか作れないんじゃないか、と感じさせます。
楽曲の展開や音の挿入のさせ方等とにかく好き勝手やってる感がカッコ良くてサークルの色なんじゃないかな、と思いますので今後もそんな好き勝手やって頂ければ嬉しいな、なんて思います。

・マッコ屋

https://www.nicovideo.jp/watch/sm37449344

https://www.nicovideo.jp/watch/sm37645155

今年唯一2作品頒布したサークル。音としてざっくりと言うならIDMと北欧ポストロックとポストメタルなんかの折衷型(その他の要素もあるのですが中心なのはこの辺りですかね)。
個人的には今年一番化けたサークルでもあると思います。それは前述の要素をこれまではそれぞれアプローチとして独立していた印象がありますが、今年頒布された作品ではそれらが融合されてきていまして。ギターの音には空間的な広がりが強まり、サイケ感が増し幻想的な響きを出すアプローチでIDM的なアレンジにもギターを効果的に使用していたり、ポストメタル的なアプローチで見られていたフレーズのギターにブレイクコア的なリズムが絡んでみたり、これまでそれぞれのジャンルで追及していたことが混ざり始めていて、そしてそれが幻想性という一貫した方向性でまとめ上げられていることで、独自の音に到達されたのではないか、と思います。
特に「クライア・クライア」はその融合具合で描き出した世界の一貫性もあり非常に素晴らしいアルバムだと感じました。
Tr.6浮く涙での広がりのある轟音ギターと幻想的なシンセとファルセットボーカルの絡み合いは聴いていてとても心地よかったです。

・アリスミア・アリスメア

https://soundcloud.com/syota-kawano/6-xfd

https://www.nicovideo.jp/watch/sm37478488

変拍子ポストロックを自称するサークル。その性質上マスロックだったりエモなんかの90年代のポストハードコア以降の流れを感じさせる部分もあるかも。
今年は、3曲入りの「Call My Name e.p.」を頒布。個人的にそろそろアグレッシブなアレンジとか聴いてみたいなと思っていたサークルだったので、今回の作品は自分のど真ん中にストライクを決めてくれたような作品でした。
このサークルの音の魅力は音のソリッドさで音の隙間を活かして埋める、とでも言えばいいでしょうか。轟音を用いる楽曲もありますが、あくまで手法の一つとしている感じでメインは埋め尽くす音ではなく、隙間を活かした歯切れの良い切れ味のある音なんじゃないかな、と感じています。
個人的にこれまでの作品では変拍子という性質上、ダイナミズムをどうしても感じさせにくいアレンジが多かった印象だったのですが(その上で、爽やかさであったりポップであったり多彩なアプローチでカバーしていた地力のあるサークルだと思います)、今回の作品でそんなイメージも覆したのでは、と感じます。
個人的にはそろそろアルバムサイズでこのサークルの表現を堪能したいなー、なんて思います。

とりあえず、こんな感じで。
来年はもっと作品が頒布されると良いな、と思いつつも今年は今年で充実した年でもあったんじゃないかな、と結び締めさせていただきます。

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