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【KBSドイツ紀行:4日目】Faber-Castellは遠かった。そしてKaweco訪問。

ニュルンベルクは文具メーカーが多く存在し、前回訪独したときにはステッドラー本社訪問&社員食堂でのランチや工場見学とスタビロの工場見学をさせて頂きました。
前回はステッドラー、スタビロを見せた頂いたので今回はFaber-CastellとKAWECOを見学させていただく予定で事前に打ち合わせをして、時間も決まっていたのですが、Faber-Castell訪問が突然先方の都合により前日キャンセルとなってしまいました。
折角ニュルンベルクまで来たのだから中には入れないけどFaber-Castell城を眺めてみたいと同社があるニュルンベルク南西部に地下鉄で訪れてみました。
前日は昇天祭というドイツの祝日で明日は土曜日という祝日と休日の間に挟まれた日のため工場は操業していないので工場の見学はできないとは知らされていましたが、突然キャンセルされるとは予想外でした。

ぐるりと敷地の外から同社の工場や本社ビルなどを眺め満足したので、ニュルンベルク北にあるエルランゲンという町に行ってみました。
現地の文具店に訪れましたが、学用品主体で筆記具はあまり購入しようというものは見かけませんでした。
地元のショッピングモールのフードコートで軽く昼ご飯を済ませ、大急ぎでニュルンベルクに戻るのですが、かなりギリギリの時間に・・・。

エルランゲンの街並み

ニュルンベルク駅からタクシーに乗り南東部にあるKAWECO本社へ。
事前に手配していた通訳さんに続いて社屋からはKAWECO社長Michael Gutberlet氏が笑顔で出迎えてくださいました。
簡単に挨拶をし、「ニホンシキデ」と言いながら日本式で名刺交換をし「マイクさん」と自己紹介してくださいました。
背は高いのですが,腰は低くとても気さくな方だと感じました。
ちなみにKAWECOは「KAWECO社」ではなく、国内外の多くの文具メーカーに部品を供給しているh&m gutberlet(グートベルレート) GmbHというのが正しい社名になっています。

祝日と休日の間に挟まれた日で会社は休みであるにも関わらず、マイク社長自ら倉庫の中を案内してくださいました。
出荷管理部門、パーツ管理部門、修理部門、メディア部門などなど順番に部屋を案内してくださり、試作品なども見せてくださいました(それらの情報は非公開ですので発売を楽しみにして下さい)
とても身近な小規模メーカーの印象があったのですが、膨大な在庫を保管しているこの倉庫の在庫金額を教えて下さり世界規模のメーカーなのだなと実感しました。

製品が入ったこのような棚がズラリと
ここでウェブサイトやカタログ、SNS用の写真撮影をしているそうです

倉庫の建物に併設されているKAWECO直営店は毎週水曜日のみの営業で一般のユーザーでも店内を見ることができます。
ライフスタイルも一緒に提案することをコンセプトとされているので、展示の仕方にも工夫があります。
現行のシリーズとヴィンテージのモデルを並べていたり特大sport万年筆が飾ってあったり何時間でも滞在できるショップになっています。

1911年の最初のsport万年筆から現行品までの流れを社長が解説
特大sport万年筆
特大(実物大?)ジャーマンシェパード


倉庫のある敷地から道路を渡って会議室や社長室のある建物に移動。
順番に部屋の中を見せてくださり、丁寧に説明をして下さいました。
社長室にはコレクションの他に先代の社長(お父さん)の絵や2003年に先立たれた奥様の写真が飾られていました。
作業デスクは可動式でかなり高い位置に設定されていて、ミーティングなどでずっと座っているので作業時はずっと立って仕事をするようにしているのだそうです


社長のデスク周り(念のため一部モザイクを入れています)

そして圧巻なのが”KAWECO ミュージアム"ことコレクションルームで、多くのヴィンテージKAWECOがズラリと引き出しに収納されています。
渡独前にKAWECO正規代理店プリコの社長石川さんから「引き出しの中が圧巻ですよ」とお伺いしていたのですが、想像以上のコレクションに圧倒されました。

Special Pencilのごくごく一部だけでこの量
sportシリーズもズラリ
sportのペンケースだけでもこの量
軍用として使われていたこの万年筆は固形インクに水(雨水や泥水)を加えて使用していたそう。
現存しているのはおそらく世界に2本だけとのこと。(中身の写真を撮るのを忘れてしまいました)


当時のパッケージは現在のデザインを考えるときの参考にされるとのこと

黒い箱の中には年代ごとにカタログや広告などの資料がびっしりと保管されています。
この中を全部紹介していたら時間がいくらあっても足りないから今日は紹介しませんと笑いながら話してくれました。
歴史とその製品ラインナップを系統立ててしっかりと記憶し、保管していて、製品を愛し、情熱を注ぎ込む姿を見て、コレクターとはかくあるべきものなのだろうと感じました。

カタログ保管棚の上にはKAWECOの什器の数々が並べられ、興味深げに眺めていたら棚の上から降ろしてきて構造を説明してくださりました。
インク窓の所にインクを入れて、ペンを動かすと中のインクが動く様子が見ることができる仕組みになっているとのこと。
https://twitter.com/590_co/status/1788916099834097853

コレクションを拝見した後は会議室に移動し、そこでもまた別のコレクションを拝見し、今後の製品開発予定のお話しや仕様のお話しなど色々とマイク社長と楽しく歓談させて頂きました。

会議室に用意してくださっていたコレクションは希望のものがあれば特別に販売してくださるとのことで、仕事で訪れていることを忘れ、1人のKAWECOファンとしてコレクションを選ばせていただきました。
どれもこれも状態がよくホテルの部屋で写りのよくない写真を撮るよりも、帰国してからちゃんと照明を整えてから”コウベブングシンジケート後日譚”として撮影&掲載しようと思います。

コレクションの一部エボナイト製のインク壺

マイク社長との楽しい時間はあっという間に過ぎ、お別れの時間になったときにこの会議室に招待された人だけにプレゼントしているというKAWECO sport の特別仕様品(ペン先と天冠ロゴ、箔押しの色がブラックで本体はブラックとホワイトのツートン)のスポーツ万年筆(製品名:Welcome Sport FP)をサプライズプレゼントしてくださりました。
こちらも帰国後ちゃんとした環境で撮影しご紹介したいと思います。

マイク社長は売り上げよりも大切な友人との関係を大切にしたいと仰っていたり、日本語も英語も分からないまま訪日し日本の友人と出会った話など色々なエピソードを話す端々に「イシカワさん」への想いを感じることができました、また、渡独前にプリコの石川社長からマイク社長を慮るお話を伺ったりしていたのでお二人がとても強い絆で結ばれているのだと感じました。
休日にもかかわらず快く面談に応じてくださったマイク社長とその仲介をして下さった石川さんありがとうございました。
こんなに楽しい会社訪問は初めてでした。

ペンアンドメッセージ吉宗氏には特別に万年筆モチーフの看板がプレゼントされ
ル・ボナー松本さんと二人して拗ねていました

楽しいKAWECO訪問の後は今日の夕方からニュルンベルク旧市街で開催されるドイツ最大規模の蚤の市「トレンペルマルクト(Trempelmarkt)」へと向かいました。
トレンペルマルクトはニュルンベルクで400年の歴史を持つ伝統的なフリーマーケットで出展者数は約4000とかなりの規模なのですが、来客数も出店数も多すぎて全てを初日にまわりきるのは無理だろうと途中で夕食としてホワイトアスパラのリゾットをいただきました。

フリーマーケット会場で私が別の場所を見ているときに偶然KAWECOのマイク社長と出会い、ヴィンテージKAWECOはあの辺りで売っていたよと教えて頂いたそうです。
あれだけのコレクションを持っているにもかかわらず、絶えずコレクションに加えるべき逸品を探し求めている姿勢に感服しました。

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