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空區地車の力学その77.One for All、All for One

祭りまであと1か月を切った。
さすがに自主トレが秘かに始まり、いよいよ祭りモードに身体も心もなってくる。遠くの方から聞こえる阪急電車の踏切・遮断機の「カン、カン、カン」の音が二丁鐘の音に聞こえ、脳内を駆け巡るようになる。祭りバカとはそういうものである。

取引先がラグビーチームを持っていたことから、私は40年ほど前からラグビー観戦をするようになった。
百キロを超える巨漢が防具なしにぶつかるので、ルールは厳しく、そのルールの難解さから馴染めない人もいる。
しかし急激にファンが増えないものの、一旦魅せられるとどっぷり浸かってしまうのがラグビーだ。もちろん私もどっぷり浸かっている。

私が思うに何と言ってもラクビ―の魅力は、「ボールを前に投げてはいけない。後ろにしかパスできないにもかかわらず、前に進んでゴールを決める」ところにある。
何故後ろにパスして、前に進めるのか?
引きでラクビ―を見ると、15人全員が一つになって、前に進んでいるのがわかる。ボールを持つ選手を他の14人の選手がサポートする。だから時としてゴールを決めた選手がヒーローなのではなく、サポートした14人がヒーロー扱いされる。チームプレーと自己犠牲の精神がそこにある。
このチームプレーや自己犠牲の精神を表わした言葉が『One for All, All for One』だ。
「ひとりはみんなのために、みんなは一人のために」と訳される。

ラグビーは防具なしで体と体がぶつかり合う格闘技のごとくであるが、ラフプレーになったり、相手選手に対して喜びを過度にアピールしたり、からかうような仕草は一切しない。また選手は審判の判定を尊重する。ファンは選手に対するブーングはしないし、試合終了後には(ノーサイド)、敵味方なく称え合あう。
選手だけでなく、審判や監督、コーチ、裏方、ファンに至るまで、全ての人がOne Teamとなる。これは、全世界共通の価値観だ。

本来は、全てのスポーツどれもが、ラクビ―における価値観を持たなければならないが、残念ながら勝ち負けが優先してしまい、品位や規律、尊重がおざなりになる。強くなればなるほど、勝ち負けに選手も指導者も観客も一喜一憂し、リスペクトがなくなってしまう。
同じように見えるアメリカンフットボールとラクビ―を比較してもその差は歴然であり、サッカーでは審判を脅す行為も発生している。
野球(MLB)においてもしかりだが、唯一、大谷翔平選手の対戦チームや審判、コーチ、裏方、そしてファンや球場にすらリスペクトする姿にファンは狂喜する。ラクビ―では至極当たり前のことなのだが。
政治や国際関係、社会も、お金儲けや私利私欲ではなく、相手に対するリスペクトがあれば、もっとみんなが幸せになれる可能性があると思う(かなり難題ではあるが・・・)。

話が大きくなったが、地車を曳く若中もまた「One for All, All for One」であって欲しい。
ハンドルがなく、ブレーキもない重さ4トンの地車を自在に操るには、自分一人の力ではムリだ。仲間(若中)の力が必要となる。
ただ楽しい、目立つ、暴れるだけで参加するのではなく、神や先祖に対する畏敬の念から生まれる品位や規律、尊重の価値観を共有した時、本当に美しい姿になると思う。

2017年2017年5月4日