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空區地車の力学その72.ジモピーだからこそ出来る"裏方"

私が子供会の綱担当になって久しいが、私一人で子供会の面倒を見ているわけではない。私はただ地車の運行時に子供たちに指示を出しているだけで、途中休憩時に綱をしまったり、子供会にお茶を出したりしている“裏方”がいるから成り立っている。
今回は若中の中で“裏方”に徹する10代後半の若者たちの話をしよう。

10代後半から若中に初参加の青年は、たいてい空區に在籍する同級生から誘いを受けての参加だ。その多くは「誘ってほしい」と口を開けてその時を待っている。
そして、たいていは目立ちたがり屋のイチビリだ。「カッコいい」に加え、「彼女ができる」というシタゴコロは若者の特権だ。
さて誘う側の若者もまた、目立ちたがり屋が多く、徒党を組むのが好きな若者が多い。こうして若中の中に、〇〇組や〇〇族が生まれることになる。
概して目立ちたがりは口が立つ。そしてリーダーになりたがる。私の身体にもそういう血が確実に流れている。一方でシャイな血も流れている。どちらが勝つかは、その人次第なのだが。

子供会から育った地元の子は、年長者の動きを見て育っているので、年長者を立てることが自然とできるし、あまり目立つととんでもない役が巡ってくることもよく知っている。裏ではわからないが、皆のいるところではイランことはしゃべらない。基本的には口数が少なく、過剰に目立つのを避け、必ず笑みで返す。
そして何よりも地車をこよなく愛している。だから10代後半とはいえ10年強も参加し続けている。
新参者は屋根に登ったりして目立つことが目的だが、地元で育った子は先輩裏方に対するありがたみを身体でわかっている。
だから時として屋根に上りたい気持ちを抑えて裏方に徹する。

裏方に徹せられる人は、愚直と見られがちだが、実は理論に長けた実力者が多い。子供会のフォローをしてくれる10代後半の地元育ちの若中達も寡黙を装っているが実力者揃いだ。曳くということを体が覚えている。
結局、地元で生まれ、地元で育った子たちが歳を重ねるにつれ、祭りの柱にならなければならない。
私が子供会の綱を担当した20年前には「子供会は邪魔だ」という若者やオッサンもいた。
サッカーが下部組織を大切にしたことで、野球に変わって子供人気No.ワンになったように、今では考えられない戯言である。

子供会の綱にもたれながらウトウトしていた子が、20年も経つと屋根頭や鳴物頭、四隅責任者、さらに腹の座った三役に成長している。

私事だが、祭り前に成長した三役から「今年も子供会の綱をお願いします」と言われ「喜んで!」と戯けてみせるが、心の中は涙の暴風雨が吹き荒れている。くそっ、嬉しいやんけ!
私も20年やるといつしか大先輩になる。さりとて彼らに、ああしろ、こうしろとは言えない。まだまだ経験不足、知識不足を自認していることと、兎にも角にも小っ恥ずかしいからだ。
しかし恥ずかしながら63歳。いつまでも曳きたいが、いつまで曳けるのやら、気力はあるが、自信も萎む今日この頃。
ただただ、地車の神さんに感謝する日々である。