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空區地車の力学

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意外と知られていない神戸のだんじり祭り。それは神戸の街の特長である「坂道」との闘いでもあった。強力伝の中に勇ましさもあり、曳く者に試練と共感を与え、見る者には「参加したい」という…
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2024年5月の記事一覧

空區地車の力学その84.神戸の地車への誉め言葉は「強い!」だ

神戸の地車は、岸和田の地車のように「速い」が褒め言葉ではない。 一番の褒め言葉は「強い」だ。 なぜなら神戸は坂の街で、全速力で飛ばせる道がほとんどない。 したがって坂道でも止まらない「強さ」と、下り坂でも止まる「強さ」が求められる。 そしてその強さは、曳き手の絶妙なバランスで成り立っている。 バランスは、3つの力により、良くも悪くも地車に影響する。 ➀自分自身に起因するもの ➁他人(他の若中)に起因するもの ➂自然現象に起因するもの 大前提として、そもそも己一人では重さ4

空區地車の力学その83.25年度には各區に地車小屋が完成する⁈

五月五日の本宮は渡御から始まる。 本住吉神社の神輿を先頭に、お稚児さん、そして8台の地車が隊列を組んで住之江區にある御旅所まで進む。その後、8台の地車は住吉全區を巡行する。まだ地車を持たない觀音林地區は神輿を担いで隊列に加わる。かっては反高林地區も神輿で加わっていたが、今年から二代目地車で隊列に加わっている。 本年度の「莵原かわら版」の表紙には本住吉神社奉賛会・武田会長が言葉を添えておられる。本年度の意気込み・想いと住吉の地車の歴史、来年度の巡行が大きく変わることが語られて

空區地車の力学その82.反高林區2代目地車、2024年DEBUT!

地車は地域によりカタチが異なります。 代表的なものだけでも、大阪型・神戸型・尼崎型・宝塚型・堺型など、多種多様。というのも、神輿は神社が作るので形が決まっており、図面などの記録も残され継承されますが、地車は氏子がお金を持ち寄り製作します。 そうなると氏子の中の金持ちの資金に頼ることになるので、資金を出した方の想いが優先されます。MLBのようにオーナーが強いのです。 宮大工の選定にも当然口を挟むでしょうし、流行り廃りに敏感な宮大工が登用されます。そもそも図面などの記録も残ってい

空區地車の力学その81.2024年5月5日本住吉神社例大祭・本宮

あんなに晴れやかだった桜の花はすっかり散り、木々からは緑が芽吹き、南からの温かい風に乗って緑の匂いが六甲の山に向かって昇っていく。 昨日の宵宮は晴天で、地車を曳くと心地よい汗が吹き出す陽気だった。 にもかかわらず五月五日、本宮の朝は空気が冷たい。 しかし、宮出しの正午になると風はなく、晴れ渡った空に雲ひとつない。 と、ライブ的に書いているが、このブログを書いて、UPしたのは9日だ。 まだ仕事が現役の私には祭りの余韻を味わう時間もなく、7日は通常勤務。いつも通り朝5時に起き

空區地車の力学その80.2024年5月4日本住吉神社例大祭・宵宮

かなり危ない系の恋愛ドラマで「恋愛はするものではなく、落ちるもの」という常套句がある。 祭りは見るものではなく、当事者として参加しないと本当の醍醐味はわからない。しかし一度参加してしまうと、ほとんどの人は魅了され、熱に犯されてしまう。 合う、合わないは相性の問題だが、一度参加して、次も出たいとなったら、もはや完全に落ちている。 まさに地車は「見るものではなく、するもの。そして、するものではなく、落ちるもの」だ。 ここに集う若中は、みな地車に落ちた人々だ。 地車には、市井の人