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空區地車の力学

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意外と知られていない神戸のだんじり祭り。それは神戸の街の特長である「坂道」との闘いでもあった。強力伝の中に勇ましさもあり、曳く者に試練と共感を与え、見る者には「参加したい」という…
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2023年6月の記事一覧

空區地車の力学 その63.安全の先に安心がある

大型の土木工事現場に行くと「共同企業体=JV(joint venture)」という看板を見かけます。JVとは、一つの工事を施工する際に複数の企業が共同で施工するための組織のこと。 この組織をまとめるのが現場監督です。 ちなみに現場監督が作業員の手伝いをすることはありません。手伝えば人工(にんく=1日仕事をした時にかかる人件費)が1人分浮きますが、それでも決して手を出さないのが原則。現場監督には現場監督の仕事があるからです。 現場監督の仕事とは、所属の違う会社から集まった多くの

空區地車の力学62.声を出せ!

地車にはハンドルがありません。にもかかわらず方向修正や方向転換ができるのは地車四隅につく4人の四隅責任者の指示があるからです。 四隅責任者が右にと言えば、曳き手全員が右に行くための力を地車にかける。四隅責任者に対する絶対的な信頼があるからこそ曳き手は一丸となって指示に従い、重さ4トンのハンドルの無い地車が縦横無尽に動くのです。 四隅責任者は地車最前方に位置する指揮者の指示で、身振り手振りに加えて大声で指示を出します。 しかし、鳴り物の鳴り響く地車横で指示を出すには自信に満ち

空區地車の力学61.巡行コース選定とスケジュール立案は三役の専権事項

5月4日は「町曳き」といって、自分の區内を地車で回り「明日は本宮ですよ、皆さん神社に集まってください」と御触れをして回る前日祭になっています。 できるだけくまなく區内を巡り御触れを出さねばならず、地車の巡行コースとスケジュール立案は三役(責任者、副責任者、会計)の専権事項です。 とはいえ百数十年以上続く祭りですから、そう毎年コースを変えられるわけではありません。そう広くはない區内なので、相当練ったコース設定だと思っても、何年か前と同じコースということもままあります。 しかし