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57、本来の「豚(ぶた)汁」か、語呂で「トン汁」か

日本人は動物蛋白源を確保するため、様々な工夫をしてきた。近辺の鳥獣のうち、兎・狸・鹿・熊・雉等々、を上手く食してきた。
豚(ぶた)の肉や狸(たぬき)の肉を、いわゆる「汁もの」にして食する産地における食文化からすれば、豚(ぶた)汁、狸(たぬき)汁、兎(うさぎ)汁と「訓読み」にするのが、言葉の成り行きである。重箱読みをすると、たぬき汁は「狸(り)汁」うさぎ汁は「兎(と)汁」となるが、日本人はさすがそれはしていない。
ただ、言葉は歴史的にそれほど厳格なものではなく、語呂・使い勝手優先で変化しても一向にお構いはないので、豚(ぶた)カツ→トンカツ、豚(ぶた)テキ→トンテキ、豚(ぶた)汁→トンジルもなるほど納得であり、一方で豚丼(ブタドン)→トンドンは語呂からあり得ないのであろう。
私は、豚汁に関しては幼年期からの使い慣れで「訓読み派」であるが、まあ、重箱読み・湯桶読みに過度な目くじらをたてない派でもある。
(知る人は殆どいないと思うが、言語学では「百姓読み」という分類もある。本来は誤読であるものが、何らかの長い慣用読みで正統使用に変化するのを追認しているのである、要は勝てば官軍・多数派の勝利ということである)


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