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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(19.11.17)

 本枠は私の読書ペースを考慮して、せいぜい二週間に一回投稿できればいいかなと考えているのですが、11月の中盤は妙に読書がはかどってしまい(読書の秋という風のうわさもある)、既に二回分ネタがたまってしまっております。だったら二週間にこだわらず、週一で更新すればいいじゃんという感じですね。本末転倒。そういえばルイージマンション3クリアしました。私は部屋の探索はめちゃくちゃ丁寧にやるタイプなのでクリアランクはAでしたね。ホテル先行でそこにホラー要素を乗っけた部屋と、ホラー先行でそこにホテル要素を乗っけた部屋が入り混じってるのがいい意味で節操がなくておもしろかった。

SHAMAN KING KC完結版(1~35冊)/武井宏之

 シャーマンキングはYAIBAと並ぶ私の魂の少年漫画であり、連載をリアルタイムで追っていたし、単行本も完全版も揃えていたのですが、物理漫画を一斉処分して電子に切り替えて以降、再読できてなかったんですよね。で、今回、KC完全版を揃えて久しぶりに読んだんですが……いやーすげー独特ですねほんと。あまりにもアンチ少年漫画だし、アンチバトル漫画。トーナメントをまともにやる気がなさすぎて凄い。漫画史上最もめちゃくちゃに荒らされたトーナメントなのでは?(二番目は陰陽トーナメント) 私は、子供の頃からまっとうに少年漫画やってる序盤中盤よりも、武井先生の個性が爆発しまくった後半の方が圧倒的に好きでして、今回の再読でもそれを再確認することになりました。複数の信仰、複数の思想、その全てを真実とする世界を支えるための設定の数々は、諦めと悟りに満ちながらも、全てに寄り添い、そして同時に全てに寄り添わない奇妙な優しさを見せています。「やったらやりかえされる(作用には必ず反作用が伴う)」、「弱肉強食は諦めの言葉ではない(数値の大小はただの事実であり、それの解釈は観測者にゆだねられる)」、「大切なのは心だ(無数の信仰と思想が入り乱れ、物体すらも変じてゆく不定な世界において、真実を確定させるのは自分の心に他ならない)」。少年漫画ナイズされ、素朴な言葉に置き換えられたそれらは、オカルトというよりは、むしろサイバーパンクに近いかもしれません。


SHAMAN KING FLOWERS(1~6冊)/武井宏之

 めちゃおもしれえのに連載誌廃刊に伴う打ち切りってどういうこった!許さねえぞ!はい、シャーマンキングの続編ですね。打ち切りになって当時の私は泣いた。裏麻倉家を筆頭に独特のひねくれ武井センス(「歴史の闇に隠れていた一族なので、最新の戦術を学べておらず、弱い」って言われ見ればそうなんだけどひどすぎる)が爆発しまくる演出・設定・展開がとにかくおもしろいのですが、特筆すべきはやはり先代シャーマンキング・フラ・ヤービスに詰め込まれたアイデアの秀逸さ。「ただの紙と金属に価値を憑依させ、それを他者に信仰させることで神を人造する」という貨幣経済をシャーマンに落とし込む奇想がとにかく素晴らしく、それが「自分が人造した価値観ゆえに、それが通用する社会内(実質、ほぼ現行世界全て)においてほぼ自由にルールを創作・改訂できる」というチートめいた強さの説得力に結びついてるのも凄い。いわば、シャーマンキングという作品内に、異なる原理に基づいた別の漫画世界を展開しているんですね(フラ・ヤービスの初出がマンキンと無関係の読み切り作品なのもなんともメタ)。彼の相棒の羊介くんがカードゲーマー……他人の設定したルールで戦うことを得意とする人間であることも絶妙。みんなも札束を振って、ヤービスを応援しよう!


探偵映画/我孫子武丸

 推理小説。探偵映画の作成中に監督が失踪し、真相を知らされていなかった役者たちが、自分が犯人となるシナリオを提示しあう「自白合戦」を行う。あらすじからアニメ『氷菓』の「愚者のエンドロール」を思い浮かべる人も多いんじゃないでしょうか。先行はこちらの作品であり、原作の「愚者~」のあとがきでも本作についての言及があります。いくらでもお洒落な知的ゲームにできるであろうこのシチュエーションを、ひたすら庶民的かつコミカルにやってくのが、何ともまあ、肩の力のぬけた我孫子テイストで、いい意味でトホホ……ってなりますね。一人の名探偵に頼らず、登場人物全員が推理をする推理合戦形式なわけですが、どれも推理というよりはプレゼン力の勝負であり、また、前提条件により「筋の通った推理」よりも「おもしろい脚本」が優先されてしまいます。これだけ聞くとなんだかダメなミステリなんですが、本作はそれを徹底的に自覚してやってるのがおもしろい。筋は通っているけれどおもしろくない推理小説と、多少荒はあるけどおもしろい推理小説。あなたはどちらを読みたいですか?


元年春之祭/陸秋槎・稲村文吾

 華文ミステリ(中国語で書かれたミステリ)。ハヤカワ・ミステリ特有の縦に細長い表紙と、文字主体の落ち着いた表紙、そして前漢時代の中国が舞台という前情報からなんとなくお堅い印象を持っていたんですが、実際読んでみたら、ものすごい勢いでどんどこ美少女が登場し、順列組み合わせしながらひたすらいちゃいちゃしており戦きました(美少女がいちゃいちゃしているのがお堅くないという私の凝り固まった価値観は脇においておく)。とにかく頭から尻まで美少女がいちゃいちゃしており、作品の主題、さらに事件の真相においても、やはり美少女がいちゃいちゃしているというしかなく、つまり、美少女がいちゃいちゃしているミステリです。また、前漢時代の人間の視点であるがゆえに、推理上に現代人にとって思いもよらぬノイズが混じりこむのも楽しい。もはや使い尽くされて出汁もでないであろうあのネタに、新しい(二千年前ですけど)切り口を見せてくれたのは素敵でした。