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転向

「ノルウェィの森」に、作者が死んでそれでも残っている本しか読まない、時の試練を受けていない本は読む時間が無駄だ、と言う登場人物が居ましたよね。その気分、読んだ当時も今も同感する気持ちが認めたくないけどありまして。誰もが記号に近い形でわかるひとしか個人名を書くのをやめてみよう。ということで、過去の文章を少し消しました。もっと消すかも。
その「ノルウェィの森」の登場人物の名前は?と興味をもたれたらぜひ原本をお読みください。ちなみに自分は原本が出てすぐに買って読みました。当時、ちょっと年上のお姉さんに、あれは私の物語よ…と吐息混じりに話されてよくわからなかったですね。裸に蝶の髪留めだけで月夜に輝く少女は、ため息まじりの思い出話ができる前に死んでしまったのでは?あの本には登場人物の過去と現在がまじりあい、どちらも当時の私から遠い時間と場所の話なのに、古いとか遠いと感じなかったところがみんなが読んだポイントでもあるのでしょう。
私が大事に何度も読んだ「ノルウェィの森」、母がママ友に貸しちゃて。返ってきませんでした、ひどい。母のママ友、お金持ちの奥さんなのに、学生が買って大切にしてた本勝手に借りパクって、本当に許せない。
香港に居た時、父がお金を送って、日本の叔母に頼んで送ってもらったベルサイユのばら全巻、私は漫画好きではないけど、うつくしい画だ、と大切にしていたのに父の同僚の娘さん(私より年上で、数回会ったぐらいの仲)に私の了解なく貸し出され、返ってこなかった。

昔の本といえば、O.ヘンリー、古い原書で久しぶりに少し読んで、ちょっといろんなものが古すぎる感じで面白く感じれれなくてびっくり。この古いフォーマットに滑り込んで笑ったり泣いたりして読んだ子供だった自分がちょっといとおしい。ちなみにこの本、多分古本屋で若い母が買って読んだものだと思う。母の字で英語で書き込みがある。母は、ある年代からは、フィクションを読むのは時間の無駄、と、ノンフィクションやエッセイを少し読むだけになっていた。
母の残した古いサキ短編集(こちらは翻訳文庫)もちょっと読んで、これも違う意味でびっくり。なんと残忍で憎しみにあふれた作品ばかり。悪い夢を見そうで途中で閉じた。サキがなんとも不本意な死を遂げたことも、彼の残した原稿を、疎遠だった親族がまとめて殲滅してしまったということも、作品にふさわしい結末のよう。戦慄。

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