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文ストのもう一つの世界線と変身する異能(お題箱から)

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※お題箱に頂いたお題への返信です。

■頂いたお題はこちら

文ストを見返した際に中島敦と夏目先生の異能力が似ているように思いました。
敦は虎、夏目先生は猫に変身することができ、両者共に“人間”から“全く別の物”になることができます。このような異能力を持っているのは作中にて、敦と夏目先生だけです。
夏目先生が小説を書いていることや、敦が孤児院で昔読んだ本として実在の中島敦が執筆した『光と風と夢』が登場したのもアニメの『二期』ということが共通し、ある意味作中で二人共に『小説家』として登場しています。なので敦と夏目先生には何かしらの関係性があるのではないでしょうか。

 二期にて組合のフランシスが敦が『本』の『道標』である事を教えてくれたのは『ある予言異能力者』だと言っていました。組合などの海外組織にその情報を提供したのが夏目先生ではないかと思います。
共食い編にて福沢が倒れる前に行動を起こしていることから、夏目先生の異能力は未来を見据える(千里眼)ことができ、その条件が『猫に変身する』ではと思います。夏目先生は『本』の在り処、もしくは『本』の所有者を知っており、それを守るために『三核構想』を造ったのではないでしょうか。

 敦が昔読んだ古い本として『光と風と夢』が登場しましたが、敦はその本の作者を覚えていないこと、実在の著書の作品が登場したことにも違和感を覚えました。本編にて『探偵社の敦』と『小説家の敦』が“二人”いたことになります。
BEAST軸にて『本』に書き込んだ世界と本来の世界が入れ替わることが明らかになっています。
『小説家の中島敦』がいる世界が“本来の世界線”で、『探偵社の敦』が存在する本編は『本』により既に改変された“可能性の世界”ではないのでしょうか。(BEAST軸の説明が難しくなりますが……)。

 その可能性の世界を生み出したのが、『本』の所有者であり“本来の世界”の『中島敦』で、夏目先生はそのことを知る唯一の人物ではないでしょうか。つまり夏目先生と『本』の所有者は作家仲間(友人)なのかもしれません。

 夏目先生が海外組織に情報を提供したとして、『三核構想』を実現したのも異能力者が手を取り合う未来を作り、『本』を守るためではないでしょうか。また『光と風と夢』は主人公が亡くなる所で物語が終わります。もしかしたら『探偵社の敦』も……。

 『本』や夏目先生の異能力、『三核構想』の目的や敦との共通点についてどう思いますか。

(補足頂いた内容)

14巻にて種田長官は「『本』は異能力が作った」と話していますが15巻にて乱歩は「異能ではない」と否定しています。BEAST軸の太宰の発言から、『本』は“本来の世界”と“可能性の世界”ともに存在していることになります。

 本編は既に『本』により改変された“可能性の世界”という事を前提に考えると、“本来の世界”の『本』は種田長官のいう「異能力」だと思います。
本編における『本』は“本来の世界”から隔離された“可能性の世界”(本の中の世界)のために「異能力ではない」ということでしょうか。そのため本編軸には“本来の世界”とは別に『本』が存在するのではと思います。

 “本来の世界”の『本』は『小説家の中島敦』の異能力だと思います。夏目先生はその事を知っており、自身の異能力を使って、“本来の世界”から本編の『探偵社の敦』が存在する“可能性の世界”を見ている(もしくは行き来が可能?)なのかもしれません。

 BEASTにて『本』の能力?について『三人以上の人間が同時に知れば世界が崩壊する』という制約があることが明らかとなっています。本編が“可能性の世界“だとすれば、その事を知っているのは本来の世界”の『小説家の敦』と夏目先生です。そのためこの制約の条件は満たしていないことになります。

 分かりにくくてすみません。お願いします。


お題頂きありがとうございました!!
すごい興味深い考察でした…!!
特に小説家としての世界線が存在するのでは、とお聞きしハッとしました。
そんなの寝耳に水だぞ。
お題主様のご慧眼にとにかく感服致しております。

お題主様のご意見から学ばせて頂きつつ、そこから導いた私なりのビジョンもお見せしつつ、お題主様とコラボさせてもらいながら、これまでにたどり着いたことのない領域に一歩近づけるような、そんな前衛的な考察にできたらいいなと思っています!
いくつか論点があるので、ひとつずつ項目立てして考えてみます。

■夏目の異能

夏目先生の異能が「千里眼のようなもの」には私も100%同意です!
『吾輩は猫である』は主人公である猫が、客観的な視点から俯瞰して人間模様を描いている作品でもあるので、世界を見通す力は実際の著作と共通しているように思います。
そしてそれがお題主様の言うように文スト世界の外側、あるいは本来の世界線に接続することによってすべてを見通せるのだったら、面白いなぁと思います!
この千里眼の能力に加えて、爆発を起こしたり傷を治癒したりしているようなので、もしかしたら一度見たことのある異能をコピーできたりもするのかな、と疑っています。

■「変身する異能」の重要性

夏目と敦の異能の共通点はお題主様のおっしゃるとおり、人間以外の存在になることができる異能ですね。両方ともネコ科の動物です。
変身するのは文ストの世界の話だけでなく史実の著作でもそうで、『吾輩は猫である』は主人公が猫ですし、『山月記』は主人公が虎に変身します。

何かに変身する「変身譚」と呼ばれる文学のジャンルはあるようなんですが、著作権切れの文豪に絞ると執筆された数はそんなに多くなく、残る未登場の文豪はフランツ・カフカくらいでしょうか。
フランツ・カフカの代表作は『変身』で、主人公がある日突然虫に変身します。
おそらく、というかほぼ確実にフランツ・カフカが登場したら彼は虫になる異能を持っているんじゃないかなと思います。

そしてこのフランツ・カフカは名前からも想像できるとおり、めちゃくちゃ重要な役割を担っている可能性がある。
だってほら、朝霧先生も虫になってますよね。
単行本の表紙裏のとこ、ビードルみたいな虫がいる。
さらに「リンゴぶつけないでください」と補記していることから、明らかにフランツ・カフカをパロってます。
(フランツ・カフカの『変身』では虫に変身した主人公に対して父親がリンゴを投げつけるシーンがあります。)
自分は役立たずだ、という意味での謙遜の表現とも取れるけれども、「人間以外の生物への変身が作者にたどり着く鍵」という隠された暗号の表現だったりして、とか思ってます。虫が作者のもとにたどり着くための道標だからこそ、敦のことを虫であるタイガービートルと呼ばせているのかもしれません。

ちなみに、タイガービートルは日本語ではハンミョウと呼ばれています。
タイガービートルの漢字表記は「虎甲虫」、ハンミョウの漢字表記は「斑猫」です。虎と猫という漢字、入ってますね。
タイガービートルは追いかけられると、後ろを振り返りながら、人をどこかに導くようにして逃げるという習性があるようなので、その習性から道しるべと呼ばれています。
人外に変身すること、もしくは虫に関連した何かが、どこかにたどり着くための重要なキーワードのような予感がしています。

■小説家としての世界線

文ストには「探偵社のある世界線」と「小説家の世界線」の二つがあるのではないか、というお題主様の気づきが本当に素晴らしすぎて…。
そのご意見をもとに、私なりに二つの世界観を仮説として立ててみましたので、図とともに紹介させてください。

仮説1:本来の世界線と可能世界が入れ替わっている

もともと存在していた本来の世界線は「小説家の世界線」で、その「小説家の世界線」で中島敦が異能を使って白紙の本を作り、そこに「探偵社のある世界線」を書き込んで入れ替えた(一番最初の改変が行われた)、という仮説です。お題主様のおっしゃるとおり、そこが可能世界であることを知っているのが夏目と敦だけなら、その世界は崩壊せず存続できると思います。
もし夏目が世界線の外側に出る異能を持っているなら、一番最初にあった「小説家の世界線」の記憶を維持し続けることはできそうですね。

仮説2:本来の世界線は探偵社のある世界線の外側に存在している

お題主様から頂いたアイデアを自分の中で消化してみたらこうなった、というもう一つの仮説がこちらです。
「小説家の世界線」が本来の世界であるのは変わらないのですが、その世界線で誰かが書いた小説世界が「探偵社のある世界線」なのではないか、という可能性です。
なので「探偵社のある世界線」は小説内の世界であり、言ってみれば登場人物たちは「文字でできた檻」の中に存在している状態と言い換えることができます。
そして、白紙の本が置いてある場所は「探偵社のある世界線」ではなく、本来の「小説家の世界線」だったりしないだろうか、と思っています。
白紙の本を手に入れるためには「文字でできた檻」という世界線の分断を突破しないといけない。
そしてその「文字でできた檻」を突破するのに必要な条件が「文字の読めない存在=人間以外の生物」になることだったりしないだろうか、と。
だからこそ、猫や虎や虫が重要な存在なのであり、「かつて研究用に切り取られた頁」も夏目が猫に変身して世界線を突破し、「小説家の世界線」から1頁切り抜いてきた、と想像できたりします。
もしかしたら白紙の本の持主が「小説家の世界線」の中島敦であり、それは横浜の彼の家に置いてあるノートや原稿で、だからこそその世界に重複して存在している「探偵社のある世界線」でも、本が封印されている場所が横浜だったりするのかも。

DAで敦は「すべての異能者の欲望を導く異能者だ」という言われ方がされてましたが、文豪の欲望とは小説を書くこと、なのではないでしょうか。敦が、全ての文豪を小説の書ける「小説家の世界線」に導いてくれる異能者なのだ、という捉え方ができます。
逆に言うと、「探偵社のある世界線」というのは、文豪が小説を書く能力を奪われ、その代わりに異能力を与えられた=呪縛をかけられた世界線という風にも考えられます。

「探偵社のある世界線」に登場している書籍が、世界線の突破が可能な夏目漱石と中島敦の二人の著作だけなのも、なんとなくこのあたりに関係がありそうな気もします。
織田が小説家になれる世界が可能世界の中にさえほとんど存在しない理由も、そもそも小説を書くことを許されていない世界だからだったりするのかもしません。織田は「道具がない」と言ってましたが、その道具を奪われてしまったのが、この世界の文豪たちなのかも、と思ったりしています。
そんな中、織田にだけわずかに小説家になる可能性が与えられているのは、やはり彼の著作と何か関係があるのだろうか、と気になっています。

ちなみに、敦が夏目のように全てを見通すことができず、「小説家の世界線」の記憶も持ち合わせていないのは、敦がまだフル虎をうまく制御できないからなのかもしれません。人を襲わないようにする制御(強い精神力)が必要なのは虎だけで、猫も虫もデフォルトでは人を襲わないので敦よりもはるかに簡単にスイッチングができたりするのかも。

勝手なイメージですが、虫に扮したフランツ・カフカは「探偵社のある世界線」ではもう何もしていない、こっそり離脱して「小説家の世界線」にひとり引きこもってマイペースに小説を書いてそうな感じがしています。そういうところが朝霧カフカを象徴している…のか?!

って、せっかく素晴らしいお題を頂いたのに、結局私の妄想でとっ散らかしてしまいました…悪癖ですね…お詫び申し上げます。

■夏目の目的

最後に夏目先生の目的ですが、これが私の中ではまだ全然ピンと来ていないのです…
夏目先生が組合に敦の存在をリークしたのだとしたら、すごいですね!
敦を狙わせることで、本人の成長を促したり組織同士を共闘させたり、将来のために必要な下準備を采配している可能性はありそうです。
夏目先生は「国の根幹に関わる重要機密を知る人物」の一人で、日本政府が常にトラッキングしながら監視・保護しているようなので、世界そのものの構造について何かを知っているのかなと思います。
なぜ本を守ろうとするのか、なぜ横浜を守ろうとするのか。
「小説家の世界線」にいる友人(中島敦)と彼の創作物を守るため、だったら胸が温まりますね!

本当にお題主様からは色々な視点でいい気付きを与えて頂きました。
その頭脳を今後もぜひともお借りしたい…
お時間とお心の許す時で結構ですので、またぜひ一緒に考察させて頂けると嬉しいです。
ありがとうございました!!

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