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ひとり上手とよばないで(麻雀)

twitterのタイムラインに、なんだか懐かしい空気のツイートが流れてきた。
いわく、雀荘に入ったら、そこには店主ひとりだけ。
「いますぐ(卓)立ちますから」などといわれ、待ち席で本を読んでいたら
6時間が経ち、そのまま麻雀を打たずに立ち去った、というもの。
インドの鉄道みたいだな、っていう感想が面白かった。
私はインドには行ったことないんだけれども。

ぱちんこを打たなくなって久しいという『銀玉親方』こと
山崎一夫さんとの会話をおもわず思い出してしまった。

「昔はさぁ、商店街にちいさな雀荘があったよね」
たいがいご夫婦とかでやってて。
「そうそう、人は雇わないで昼間でも誰かが遊びに来たら
ぱちんこ屋とかに4人目を迎えにいくの」
雀荘の人件費って大きいですからねえ。
「ぱちんこを打ってる後ろからポンポンって肩をたたいて、
ヤマちゃん、早くおいでよ!
ぱちんこなんか出ないよ、マンガンだったらすぐアガれるよ~、って」
ヤマちゃんって(笑) まるで自分が誘われてたみたいですね。
「で、夫婦とヤマちゃんで1卓立つ、ってね。経費は少ないほうが店は長持ちするよねぇ」

いまは昔、山崎さんがご自分の雀荘の支店を広げていこうか、ってころの話だったと思う。

客が自分一人でなくても、東南戦で遊ばせる雀荘だとゲームの展開によっては、ゲームに参加できるまで小一時間ほどひとりぽっちになる時間もざらだった気がする。
待ち席のまわりにはスポーツ新聞、マンガなどが並べられていて、
それらを読んでいるもよし、すでに打っている顔なじみの後ろにへばりついて、その摸打に茶々を入れながら麻雀を疑似体験して時間をつぶす、
っていうのもあった。あっというまに時間は過ぎた。

余談だけれど、麻雀好きが高じて雀吉と呼ばれていた先輩が、
「後ろで見ててさ、『こいつヘタだな』って思う相手と実際に打つと
いい勝負。『おれと同じくらい強いかな』って思う相手はだいたい
自分より強いんだよな」
なんて言っていた。
それほど思うようにはいかないゲームっていう意味だったのかな、
まだ私がガラスの10代だったときに教わった言葉。
学校にいた頃の記憶なんて、ほとんどどこかに飛び散らかっているのに、
こんなことは忘れないものです。

昔話ついでに書いておくと、そんな雀荘の表においてある看板には
屋号、レート(レートってなんのことだっけ(笑))などと並んで
『女性・初心者大歓迎』
『おひとり様でも安心して遊べます』
などの誘い文句が書かれているのが多かった。
そのわりには女性といったらスナックのママさん風とか、煮ても焼いても食えなさそうなオババさまをたまに見かけるだけだったし、初心者ってどのレベルからいうの? っていうくらいに、誰もが堂々と遊んでいた。
あまりコストをかけずにネットで麻雀を覚える、なんてことが無かった時代で、いまならネットでマンガンのアガリ方とか身につけてしまったら、雀荘デビューしても、あまり遜色ないんじゃないかな?(行けとは言ってない)

そんな時代に麻雀仲間のナルちゃんが行きつけの雀荘でバイトをすることになったという。
朝の10時くらいに開店作業して、あとは客を待つ。客が来たら一緒に打つ。
勝ったり、負けたり、勝ったり勝ったり。
同じ時間帯のバイトに入っているのは、もうひとりだけ。
1卓4人で遊ぶ店だったから、客がひとり来たら、もうひとり来るまで
待ってもらうことになる。

最初の客がやってきて、

世間話しながら、お茶を飲む(10分)

スポーツ新聞でタイガースの試合結果を復習する。
知っているのに「阪神また負けたかぁ」などという(15分)

すぐにも打ちたいオーラを出しながら自動卓のボタンを押して、ひとり麻雀をはじめる。テンパイしたら、アガリになるまで山をめくる(30分)

それにも飽きて、マンガをパラパラめくる(5分)

その日にかぎって『ふたりめ』がなかなか来てくれない。
ちょっと気まずいね。

お茶のおかわりを頼む(5分)

『2画取り』(麻雀牌をつかったひとり遊びのパズルゲーム)などで
遊びだす(40分)

そろそろ2時間、客がしびれをきらして、こう言った。
「なんや、この店ぜんぜん客が来ぉへんなあ。
看板に『おひとり様でも遊べます』って書いてあるくせに」

それを受けて、ナルちゃん、
「せやから、合ってますよ。
 お客さん、さっきから『おひとりで』遊んでますやん」

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