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「半テレワーク × 中距離移住」で、従業員も会社も幸せになるという話 #わたしのビズ・ディスタンス

本記事は、 連続note投稿企画「#わたしのビズ・ディスタンス」に寄稿されたものです。
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「ビズ・ディスタンス (Biz-Distance)」とは?
相手を思いやることで生まれる、適切なシゴトのキョリ感のこと。

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ビズ・ディスタンスや本企画についての詳細は、一般社団法人ビズ・ディスタンス協会のHPをご参照下さい。

こんにちは。freee株式会社のカスタマーサクセス部門にて、既存顧客に対するマーケティングを統括している松井と申します。

本記事のテーマ「ビズ・ディスタンス」について

「ビズ・ディスタンス (Biz-Distance)」とは、「相手を思いやることで生まれる、適切なシゴトのキョリ感」を指す、新しい言葉です。

物理的な対面や紙の書類にこだわるような従来型の「近すぎる距離」でもなく、テレワーク化によって心の距離が離れてしまう「遠すぎる距離」でもない、その間の「ちょうどよい距離感」を示す言葉ということになります。

私は、2019年から三浦半島で家族と暮らしており、コロナ禍が始まった2020年2月以降は9割テレワークをしながら時々出社するという生活を続けています。

少しだけ私の住んでいる場所を紹介すると、

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穏やかな海の上をゆっくりトンビが飛び、

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夕焼けが綺麗な日は富士山がとても綺麗な場所です。

東京のオフィスまでは片道2時間かかりますが、読書や仕事をしていれば意外とあっという間に着いてしまい、「必要な時はいつでも出社できる」という距離と言えます。

私は、このようにオフィスから片道2時間くらいの場所に移住すること「中距離移住」と呼んでおり、オフィスワーク(物理出社)とテレワークのハイブリッドである「半テレワーク」と非常に相性が良いと考えています。

そして、この「中距離移住 × 半テレワーク」という働き方こそが、従業員にとっても企業にとってもメリットの大きい距離感、すなわち「ビズ・ディスタンス」であると確信しており、これからの働き方のスタンダートになってほしいと考えています。

そこで今回は、その働き方のメリットについて、私の体験とデータを交えながらご紹介していきます。

多くの人がテレワークを希望する一方、週1回の出社も望んでいる

テレワークという働き方は、会社のシステム等が在宅勤務に対応している必要があるものの、非常にメリットの大きい働き方です。

【テレワークのメリット】
・通勤がなくなるため、従業員は通勤のストレスから開放され、会社は通勤費を出す必要がなくなる
・営業が得意先へ移動するための時間がなくなるため、より多くの商談がこなせるようになる
・オフィスを解約 or 縮小できるため、家賃や各種維持費もカットできる
など

一方で、ビデオ会議やチャットツールにも限界があるため、以下のようなデメリットもまた同時に発生してしまいます。

【テレワークのデメリット】
・従業員のモチベーションや勤務状況などが把握しづらい
・新人研修が難しい(習得状況の把握が難しく、人間関係の構築も困難)
・別の部署に勤める社員との交流が極端に減る
など

そのため現状の最適解として、「テレワークを基本としながら週何回か出社する」というハイブリッドな働き方(半テレワーク)が編み出されています。

実際に、テレワークを望む人の75%が「週に1回以上の出社」を希望しているという学情の調査結果もあり、働き方に対する世論も「半テレワーク」に向かっていると言えます。

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2020年6月 株式会社学情の調査レポートより引用

中距離移住は、半テレワークのメリットを倍増させる

それでは、なぜ「中距離移住」と「半テレワーク」の組み合わせが従業員と企業の両方にとって最適な働き方になるのでしょうか。
私の実体験と各種データを交えながら、そのメリットについて解説していきます。

私が考えるメリットとしては、以下の3つがあります。
いずれも、企業と従業員の双方にとってのメリットです。

【中距離移住 × 半テレワークのメリット】
・メリット1:「住む場所の選択肢が増える」事自体が福利厚生になる
・メリット2:採用できるエリアが広がり、採用力の強化につながる
・メリット3:従業員の地方に対する理解が深まる

「オフィスから片道2時間」のエリアはどこまで?

先述の通り、「中距離移住」とは「オフィスから片道2時間くらいの場所への移住」を指しています。
各メリットの説明に入る前に、具体的にどういう場所がその圏内に入るのか確認してみましょう。

新宿駅が最寄りのオフィスを想定して、Yahoo!で調べてみました。

名古屋→新宿:2時間4分 10,560円
静岡→新宿:1時間27分 5,940円
軽井沢→新宿:1時間30分 5,280円
長野→新宿:1時間44分 7,240円
那須塩原→新宿:1時間36分 5,280円
水戸→東京:1時間50分 3,890円

また、大阪ではこのようになります。

広島→大阪:1時間43分 9,890円
和歌山→大阪:1時間26分 1,270円
福井→大阪:1時間59分 5,610円
静岡→大阪:1時間52分 10,560円

東京の場合、西は名古屋、北は那須塩原まで。
大阪の場合、西は広島、東は静岡まで。

これだけ見ても、相当広い範囲をカバーできていることが分かるかと思います。

運賃に差があるのは、特急料金や新幹線の有無によるものです。
しかし、近年はテレワーク移住者の通勤費を補助してくれる自治体も出てきていますので、片道5千円くらいで週1~2回の通勤であれば、会社の通勤手当と補助金によってほぼ自己負担無しで新幹線通勤ができる場合もあります。
(「テレワーク 移住 補助」などで検索すると色々出てきますので、ぜひ検索してみて下さい)

では、これだけ従業員が居住できるエリアが広がった時、具体的にどういうメリットがあるのでしょうか。

メリット1:「住む場所の選択肢が増える」事自体が福利厚生になる

内閣府によると、コロナ禍以降、地方移住の希望者が増えているというデータが出ています。
通勤が減った(なくなった)ことをきっかけに、郊外に移住して、低コストで良い住環境を得たいという方が増えつつあるようです。

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2020年12月 内閣府の調査レポートより引用(32p)

上のグラフが示している通り、コロナ禍が始まる前の2020年12月と比べると、それ以降は希望者が増加傾向にあることが分かります。

私の同僚も、逗子、伊豆、千葉の外房、福岡など、様々な地域へ移住したり、検討し始めている人が増えてきています。
私自身もまた、半テレワークが本格的に継続するようになったら、甲信越エリアへの再移住も考えていたりします。

このような中では、もはや「住む場所の選択肢が増える」事自体が福利厚生になると言えるでしょう。

また、先日freee社が行った調査によると、「大手企業を選んだ学生は、就業先が大手企業でない学生に比較して、3.2倍福利厚生を重視している」というデータもあります。
つまり、大企業だけでなく、ベンチャー企業も福利厚生が採用における競争力となるということです。

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2021年1月 freee株式会社の調査レポートより引用

ベンチャー企業は小回りがきくため大企業と比べてテレワーク対応がしやすいかと思います。
「好きなところに暮らしてOKです。テレワーク手当も出します」とすれば、それだけで飛びつく人材は一定数いるのではないでしょうか。

メリット2:採用できるエリアが広がり、採用力の強化につながる

また、当然ながら採用できる人材のエリアも広がります。

例えば従来であれば、東京の企業が採用できる地域はせいぜい、東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏4県だけだったでしょう。
しかし「中距離」がOKとなれば、東京の企業は、愛知、静岡、長野、栃木、茨城と、かなり広大な範囲を採用エリアとすることができます。

必然的に採用活動の競争率は下がりますし、地方に埋もれている優秀な人材の発掘にも繋がるでしょう。

もちろん地方に暮らす人にとっては雇用創出にもなりまし、それは地方創生にも繋がりますので、正に「三方良し」だと言えます。

メリット3:従業員の地方に対する理解が深まる

都市部にある企業の多くは全国のユーザーやターゲットを相手にしているかと思います。
しかし、都市部ではビジネスが伸びているが、地方ではあまり伸びていないということが往々にしてあるのではないでしょうか。
中距離移住の促進は、この問題も解決する可能性があります。

あなたが東京都内を歩いている時、目にするのはほとんどが大企業やITベンチャーのビル、もしくはチェーン店やおしゃれな個人店といったところでしょう。
一方で、例えば私が住む三浦半島の海岸部だと、そこに広がる風景は、小さな造船所や石切場、漁船が並んだ海辺だったりするわけです。

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都心部ではまず見られない風景

これは私も以前渋谷に住んでいたので実感があるのですが、都市部の風景ばかり見慣れてくると、世の中はそういうところばかりだと無意識的に錯覚してしまうことがあります。
例えばマーケティング活動を行う際、つい「都市部にしかいないようなペルソナ」を設定してしまいそうになることがあるのです。

また、都市部に普及しているサービスがメジャーだと錯覚してしまうこともあります。
例えば私の住むエリアは、Uber Eatsは無いけど出前館はあったり、Apple Payには対応しておらずPayPayにだけ対応しているお店が多かったりします。
地方に暮らしながら都市部に通っていると、各社のエリアごとのマーケティング状況が何となく分かったりするのです。

つまり中距離移住は、従業員が無意識的に持ってしまうバイアスを取り除く効果があります。
これにより、地方のユーザーに響きやすいマーケティングが打てるようになるかもしれませんし、地方の視点が加わることで新しいビジネスが生まれるかもしれません。

まとめ:「ドーナツ化」から「ベーグル化」へ

以上、企業が中距離移住を推進することのメリットについて、様々な角度で取り上げてきました。
「中距離移住」と「半テレワーク」の組み合わせは、従業員側だけでなく企業にとってもメリットがあるということがお分かり頂けたのではないでしょうか。

これまでの日本は、都市部に毎日通うことを前提とした生活を強いられてきました。
都市部は地価も物価も高いため、人々は仕方なく周囲の郊外へ暮らし、満員電車の中を毎日揺られる生活が当たり前になりました。
そのような社会現象は「ドーナツ化現象」と呼ばれますが、決してそれはポジティブな響きの言葉ではないでしょう。

しかしこれからは、居住エリアと働く場所の自由度が広がることで、「ドーナツ化」がポジティブな現象に変わっていくと考えています。

左のようなドーナツ型の居住エリアが、右のようなベーグル型に広がっていくということで、私はこれを「ベーグル化現象」と名付けることにしました。

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「ベーグル化現象」は、企業が働き方を変えることで初めて起こる現象です。起こるというより、企業が「起こす」現象と言えるかもしれません。

しかし、コロナ禍が終わった時に企業が元通りの働き方に戻ってしまえば、再びネガティブなドーナツ状態が続いてしまいます。
つまり、今が働き方の大きな分岐点なのです。

実は、片道2時間の通勤は意外と楽しいものでもあります。
車窓から海や山を眺めたり、電車の中では本を読んだりNetflixを見たり。
東京での飲み会も一次会までなら参加できますし、たまに乗るグリーン車で飲むビールもまた格別です。
そして家に帰れば、そこには豊かな生活環境が待っているのです。

日本の企業が「中距離移住」を推進することで、企業にもたくさんのメリットがあり、そこで働く人の生活も豊かになります。
また、それによって地方の人口が増えれば、その地方の消費が増え、多くのスモールビジネスも活性化するでしょう。

正にこれこそが、私の考える「ちょうど良いキョリ感」であり、「ビズ・ディスタンス」なのです。

この記事が、読者の皆さんが働き方を見つめ直すきっかけとなり、「中距離移住」という考え方が広まるきっかけになれば、これほど幸いなことはありません。
是非、SNSなどで皆さんのご意見をお聞かせ下さい。


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