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現物出資による設立はまれなのか(補足)

 発起人による出資の履行については、発起人が割当てを受ける設立時発行株式(32条)を前提に行われます。
 そして、その割当てについては、定款又は32条1項の規定により、発起人全員の同意により定められることになっています。

 ですので、定款の認証を受ける前であっても、①定款が作成されて発起人の引受けが確定している場合、②発起人の同意により発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数が確定しておれば、設立時発行株式が引受が行われたと理解することができるので(34条)、定款「認証前」であっても、出資の履行は行うことができるものと考えることができます。

(ただし、②が①より先行することは、定款の絶対的記載事項として発起人の確定が必要(27条6号)ですので、発起人が定まることが割当てを受ける株式数の決定の前提条件となりますので、物理的にありえません)。

 以上より、金銭での出資と、定款作成日との関係は重要であることが、実務上重要であるとされてきました。

なお、民四103号回答(昭和31年5月19日付)の通達では、「定款認証前に株式の引受け及び役員の選任をなし、その後定款の認証を受けている株式会社の設立の登記申請は受理してよい」とされています。

 そんな折、令和4年6月13日民商286号では、規制緩和の風を受けてか、払込時期について、より緩和する取り扱いを認めることとなりました。
すなわち、本来、払込の時期については、設立時発行株式に関する事項が定められている定款の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、発起人又は設立時取締役(発起人から受領権限の委任がある場合に限る)の口座に払込まれているなど当該設立に際して出資されるものと認められるものであれば、差支えないとされました。
 会社設立行為において、発起人の同意・出資の履行という時系列に例外を設けたことになり、これは規制緩和というよりも会社法手続違反を甘受するものと捉えることになるのではないでしょうか。
 上記射程として、増資において株主総会決議よりも前に払込みがあった場合でも同様に認められるのでしょうか。この場合、金銭の現物出資との異同はわからないものとなります。
 なんでもかんでも規制緩和という文脈で語るのもどうかなと思っている次第です。
では、また。

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