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偽痛風。

 ある日突然、激痛と共に左膝が曲がらなくなったことがある。左膝はいわば私のウイークポイントであり、長年に渡って不調を起こしていたのですが、さすがに曲がらなくなったことはありませんでした。

 飲食業は基本的に立ち仕事です。私の場合は平均13時間ほどは立ちっぱなしでも苦になりません。慣れていましたからね。そんな毎日を過ごす中で、仕事ももう終わりという タイミングで違和感を感じ、その後、あれよあれよという間に悪化しまして、家に帰り着く頃には激痛で曲げらることが不可能となりました。

 これはついに、酒の飲み過ぎで痛風発作が発症してしまったかと思ったのですが、これが話に聞くほどは痛くはないのです。激痛には変わらないのですが、全く動けないというわけではない。ただ、膝は痛くて曲げられない、というより曲がらないという感じ。
 今回は、こんな病気もあるよっていうお話です。

 翌朝、アプリでタクシーを呼び、仕事前に前夜に調べておいた近所の医院へ。レントゲンを撮り、触診などで診察してもらいましたが、先生はどうにも腑に落ちない様子。
 痛風発作に似てはいるが、痛くて曲げられないほどは腫れてはいない。通風とは言い切れないと言うのだ。とりあえず貼り薬のロキソニンテープを処方してもらい、膝に貼るように指示されて様子を見ることに。

 しかしながら、店を営業しないといけないので様子をみるというのは現実的ではありません。飲食店の従業員なんてギリギリの人数しかいませんので、どうにかして出来るだけ早く曲がるようにするしかないのです。この時ほど、この仕事についたことを後悔したことがないくらい痛かったですし、大変な状況でした。とにかく牛歩のようにしか歩けないので、時間に余裕のある行きはまだしも、終電ギリギリで電車に乗らなければいけない帰り道は本当にキツかった。

 埒が明かないので職場の近くの整形外科を検索します。当時、秋葉原で働いていたので、その近辺なら店に泊まり込んで朝イチで診てもらえるだろうし、都心のクリニックなら膝専門みたいなところもあるかもしれないと思ったわけです。
 そんな都合よくあるかな? とは思っていたのですが、ありました。その名も「日本橋整形外科クリニック」という医院です。膝専門ということではなかったのですが、評判は良さそうだったのでネット予約をして店泊。

 翌朝、午前中に診察してもらいました。
 結果は、やはり痛風ではなかったのです。では、何なの? 先生の説明を聞きます。レントゲン画像を見ながら簡潔に話して頂けました。
 要約すると、子供の頃に膝の関節の上側に出来た軟骨が消滅せずに硬化し、少しづつそれが崩れたり、削れたりして粉状になり、関節内に入り込んで炎症が起こっているということでした。

 可動部に砂のように異物が入ってしまったので、炎症は起こすわ、動きは悪くなるは、ということです。しかも痛風の発作も同じ原理でして、関節に入り込むのが骨の粉ではなく、尿酸結晶という針状の結晶であるのは酒飲みには有名な話。
 骨の粉は長く尖った結晶ではないので、そこまでは痛みが酷くならなかったというのが理屈のようです。

 理由がわかったら治療です。簡単な手術もあったのですが、仕事を休まないですむ薬物療法を選択。3日間集中して1日の投薬上限量の内服ロキソニンとロキソニンテープで痛みと炎症を抑え込むという方法です。原因も同じなら治療法も同じ、これも痛風の治療法の1つなのだそうです。

 珍しい症例だったようですが、これも偽痛風なのでしょう。偽痛風とは尿酸ではなくてピロリン酸カルシウム結晶という物質が関節の中に入り込む症例を言うそうです。

 酒飲みにはドッキリする病気ですが痛風でなかったのは幸いでした。
 この2年後に再発し、酷い医者に当たってしまうという話もありますが、それはまた次の機会に書こうと思っています。

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