夏の終わりの会話劇
8月も残すは今日と明日の2日間となったのに、猛暑が一向におさまる気配がない。部屋の中はクーラーのおかげで涼しく保てているけれど、それでも汗がふき出してくるほどだ(たんに自分が汗っかきなだけでもあるが)。
このまま永遠に夏が続くんじゃないかとも思うけれど、そんなわけは、まるでない。夜の七時頃まで明るかった空は、今ではすっかり宵闇に包まれているし、ひぐらしの声はぐんと遠のき、代わりに鈴虫の声が聞こえ始めた。
目で見て、耳で聞いて、肌で感じて。季節がゆるやかに秋へと向かっていることを実感する。
夏の終わりはどことなく寂しくなる。
季節の移ろいと、センチメンタルの秋、なんて言葉に気持ちが引っ張られているのかもしれない。前述の通り、日が短くなっていく=暗い時間が長くなっていく、というのも一理ある気がする。なんて考えていたら、あたまの中で会話が始まった。
・
・
・
「夏と冬、どっちが好き?」
「えー……秋」
「どっちでもねぇのかよ。でもわかる、わたしも秋がいちばん好き」
「気が合うねぇ。ね、ナントカの秋ってよく言うじゃん。ナントカの夏とか冬とは言わないのに」
「言われてみるとたしかに」
「思いつく限り言っていこーよ、ナントカの秋」
「ええー?じゃあスタンダードに、読書の秋」
「いいね。じゃあ、食欲の秋」
「言うと思った。んーと、芸術の秋」
「スポーツの秋」
「み……実りの秋」
「……今って秋?」
「暦の上では」
「じゃあ、晩夏ってやつか。夏の終わり」
「晩夏か……ね、思ったんだけど」
「んー?」
「夏ってさぁ、暑いし汗だくになるし早く終わんないかなーって毎日思ってるくせに、いざ終わりが近づくと寂しくならない?」
「んー……なる」
「あれって何でかなぁ」
「そうねぇ…………小学生の頃さぁ、」
「え、何の話?」
「聞いて」
「あ、ハイ」
「年中半袖半ズボンの子、いなかった?小学生の頃」
「いた。ナゾだけど、どの学校にも必ず一人はいるよね。あいつら」
「あいつらとかうける。あいつらさ、何をもってあの格好でいるんだろうね?元気アピール?それとも強がり?」
「両方じゃない?……っていうか、ほんとに何の話?」
「ああ、ごめんごめん。脱線した。……たぶん、そういう奴なんだよ」
「ん?何が?」
「夏って季節が。居るとうるさい、あつくるしいって思うのに、居なくなると急にシーンってしちゃう」
「……ほほう」
「そんな感じ。伝わる?」
「……なるほど?」
「納得してないでしょ」
「ちょっと何言ってるかわかんないです」
「サンドウィッチマンやめて」
・
・
・
友達なのか姉妹なのかもはっきりしていないけれど、この二人はころころ話が変わる。あたまの中で笑い合う彼女たちを、いつか自分の書く物語に登場させたい、なんて思ったりした。サンドウィッチマン、大好きです、わたしも。