知らぬが仏の精神で
嘘をついてた話。
もう数年前のこと。東京駅のトイレで傘をなくした。買ったばかりだったし気に入っていた。
問い合わせしたし直接も伺ったけどなかった。悲しかった。
爆速で同じ傘を新調した。
その時に一緒にいた人には「傘、あったよ」とだけ言った。
よくあったね、よかったねえ、なんて話になった。
話している時にはすでに私の中でも、もう落とした傘が見つかっただけの話になっていた。
新しい傘の代金は確かに財布から消えたけど、不注意でなくしてしまった悲しい記憶は無事に飛ばせたのだ。
完全に記憶の書き換えに成功していたわけで、
傘を買ったお店に再び行くまでそんなことさえ忘れていた。
こういう時、馬鹿だと助かる。嫌な体験が消せるタイプの記憶障害を自らの手で起こすということ。
他にも消したい嫌な思い出がいくつもあるんだけど、
そういうのも傘を買い直してリセットしたように、上手いこと脳を調整して書き換えられたらいいのにな。
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