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たくさんの愛をありがとう。


わたしが中学生のとき、彼は家にやってきた。

♂生後半年

名前はくじ引きで決まったね、もうなんて名前が他にあったかなんて覚えてないくらい、決まった名前がピッタリな子だった。

彼はあまりおもちゃでは遊ばなかった。ピーピー音の鳴るおもちゃは苦手そうだったから、わたしの部屋にあったぬいぐるみや、わたしたちの脱いだ後の靴下で良く遊んでた。

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学校や仕事で日中家を開けることが多く、今思えばベッタリ遊んであげることって結構少なかったなって。わたしが高校に上がるまでは、一緒に公園連れてって走り回ったりしてたけど、高校で部活に入ってからはそうはいかなくなった。弟も同じく。たまに休みの日に近所の公園に散歩しに行ったりしたけど、大きくなったわたしにとって小さな遊具で遊ぶことはできなくて、1回だけ一緒にブランコ乗ったけど、怖かったからすぐ降りた。

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よく覚えているのは、小学生のときに遠足で行った大きな公園にハマってたから、そこに何回も連れてったこと。大きな滑り台を彼を抱きながら滑ったり、芝生を走り回ったり。彼はといえばよくその辺に咲く花を食べようとしてた。

初めて田舎のおばあちゃん家に行った時は、家の前の砂利を歩きにくそうにヒョコヒョコしてたのがなんだか可愛かった。
田舎には田舎のわんちゃんたち(先輩たち)がいて、その子たちと同じように、おじいちゃんに「ほら山いけ!」ってリード外されてたっけ。

なんでも興味津々な彼は、おじいちゃんにカップヌードルを食べさせてもらってたこともあった(何してくれてんねん)
自分から川まで降りてって落ちそうになってたり、ヘビ追いかけようとしたり、おじいちゃんが作った蜂の巣ケースの蜂の出入り口に鼻突っ込んだり(この後刺されることになる)、お正月なのに外があったかすぎて日向ぼっこしたり、その後一緒に海で夕焼けも見たね。
年に2〜3回行ってたけど、わたしが社会人になってからは全然行けなくなっちゃったね。

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わたしがトリマーになったのも彼がキッカケで。
彼をトリミングに行かせると、いつもフワフワになって男の子なのにリボンまでつけられて帰ってくるのがなんだか嬉しくて、自分もそうしてあげられたらなって思ったんだっけな。勉強が嫌だったのもあるけど。

あんな過酷なところだとは思わなかったけど、自分でカットが出来るようになって余裕も出てきた頃には、自転車の前に彼を乗せて一緒に登校して、自分でトリミングして連れて帰ってた。

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籠ちっちゃすぎるな(笑)ごめんやで。

これがさ、爪切りがちょーーーー嫌がりでさ、めっちゃ大変やった。
カルテがあるんやけど、元々わたしが学校通う前からサロンじゃなくて学校にお願いしてたから、過去に先輩方がして下さってるカルテのコメントを見ると、「爪切り嫌がる」「爪めっちゃ嫌い!」「爪切り暴れる」とか書かれてんの!!あんなスマした顔で帰ってきて、「俺今日もいい子にしてたやで〜」みたいにおやつ食べてたのに!!
実際自分がやってみて、暴れるくらいの爪切りを経験して、なるほどねってなったわね(笑)

でもね、爪切り嫌!って書かれてる後には決まって、「シャンプー終わったら寝る」「懐っこい可愛い♡」「甘えた♡側にいないと鳴く♡可愛い♡」「立たへんけどいい子!」とか書かれてんの!!わたし以外にそんな愛想振りまいてんの!?妬いちゃう!!なんてこともあった。

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これはわたしがクリスマス用に作ったリボンを誇らしげに付けてるシオンさん。

散歩は、朝がお父さんで夕方がわたしの担当やったんやけど、お父さんの仕事の都合で、わたしが社会人になってちょっとしてからそれが逆転したのね。毎朝わたしが散歩行って、夕方にわたしより早く帰るお父さんが散歩行って。

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実は、実家を出てからもそれは続いていて、実家の近くに家を決めた理由もその1つやった。
トイレは外でしかしなかったから、絶対に外に連れてってたの。毎朝仕事に行く前の15分は、わたしと彼との時間。

でも去年の年明けくらいかな、だんだん歩くのがヨタヨタし始めて、ヘルニアが再発してしまったんよね。そこから歩けなくなるのは早くて、それでも後肢引きずりながらちゃんと立ってたの。

それが季節を超えてまた冬が近付いてきたときに、前肢に力が入らなくなって完全に寝たきりになっちゃったのね。

ご飯も上手く食べられなくて、でも食欲はずっとあったから食べさせてあげたり、そういうサポートがないと動けなくなって、ああおじいちゃんになったなぁって。もう少し前から顔つきとかが変わってきてたから、そう感じることはあったんやけどね。

散歩も歩けなくなってからは、仕事前はトイレだけさせてあげて、休みの日は抱っこでちょっとだけその辺歩いたりして。

サロンでそういうお年寄りわんこたくさん見てきたし、今までありがとうございました、っていうこともたくさん言われてきたけど、いざ彼がそうなるとつらくて見てられなくて、何度も目を背けようとしてしまった。ごめんね。

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そんな彼が1月10日、完全にご飯を食べなくなってしまった。本当に急に。

仕事が終わってお母さんから「シオンがご飯を食べない」と連絡がきていた時、正直、ああもう、って思っちゃった。
実家に帰って手でご飯を口元まで持ってっても、パクパクすらしなくてダメだった。
お父さんがちゅーるみたいなのをあげてくれて、なんとかごっくんはしてくれたみたいやけど、半分も食べてなかったから泣きそうになった。

そのときは一緒にいれなかったけど、次の日たまたまわたしだけお休みやったから、予定も変更してもらって1日一緒にいようって思ったのね。

実家に帰ったら、何かを訴えているのか声にならない声で鳴いて、最近鳴くことなんてほとんどなかったのにたくさん鳴いて、しんどいんかな苦しいんかなって思ったけど、撫でると鳴きやむから、彼お得意の撫でて攻撃だなって思った。

しばらくそのまま顔を頭を撫で続けて、静かだったから寝たかなって思ったら、もう息はしてなかった。

何が起こったかわからなくて、また声を聞きたくて撫でるのを辞めてみたけど鳴かなくて。

息を引き取る瞬間はわからなかった、なんで、こんなに近くにいたのに。ごめん、ごめん、気付いてあげられなくてごめん、ごめんね。

どれだけ抱きしめても反応が返ってくることはなくて、ぐでんとした手足や顔をわたしは、ただ抱きしめることしかできなかった。

でも最後に彼をきちんと綺麗にできるのはわたししかいないし、それはわたしの役目でわたしがしなきゃいけないから、涙で手元がぼやぼやしてたけど、最後のトリミングをしてあげた。

痩せ細ってブラッシングするのも怖かったけど、傷つけないように、痛くないように、そっと、優しく。

おじいちゃんになってもずっと嫌がってた爪切りのときに、なんの反応も見せなかったのがいちばんしんどくて、わたし自身なんとか保ってたものが一気に崩れて声をあげてしまった。

歯茎が下がって仕舞いにくそうだった犬歯もきちんと仕舞ってあげて、何回拭いても涙ですぐにカピカピになる目元も綺麗にしてあげて、最後まで綺麗だった毛並みはもっともっと綺麗に整えてあげた。

本当に綺麗な姿なままで、ただ寝てるみたいやった。

火葬を終えて変わり果てた彼の姿をみてやっと彼にもう触れられないのを実感した。

ダックスにしては短い鼻も、ガラス玉みたいに綺麗な目も、ムニっとしたリップラインも、男の子にしては高い声も、ちょっとわがままボディだったのも、毛並みが綺麗でサラサラだったのに胸元はクルクルフワフワだったのも、尻尾や耳の飾り毛がヒラヒラしてたのも、食い意地張ってたとこも、人懐っこすぎるとこも、撫でてってガリガリしてくるとこも、朝は絶対わたしの布団に入ってくるとこも、散歩中に振り返ってくるとこも、一緒に写真撮ってくれるとこも、爪切り暴れるとこも、鈍臭いとこも、わたしが辛いときに絶対側にいてくれるとこも。

ここには書ききれないくらい全部が大好きで、本当に姉弟みたいな関係でいられたこの16年が、宝物という言葉だけではおさまらないくらい、わたしにとっては本当に大切な時間やった。
それはこれからも変わらないし、これは彼だからこそ捧げられた愛だと思う。

彼の最期の日に側にいられて本当によかった、それでも、もっとぎゅっと強く抱きしめてあげたらよかった、ごめんね。

学校に連れてってたことで同期や先輩後輩や先生方にたくさん可愛がってもらえたし、直接じゃなくても写真を見て可愛いとか笑ってくれたりとか、本当に色々な人からたくさんの愛情を注いで貰えたから、わたしもすごくすごく幸せでした。ありきたりな言葉でしか言えないけど、みんな、シオンを愛してくれてありがとうね。

わたしたち家族のところに、わたしのところに、来てくれてありがとう。
わたしもシオンからたくさんの愛を貰ってたな、わたしのことを好きになってくれてありがとう。
わたしはシオンと出会えたことで幸せな16年を過ごせたし、もう朝シオンと散歩に行けなくてシャキッとしなくてしんどいけど、シオンが頑張ってくれた分、わたしも頑張るね。


大好き。ありがとう、大好きだよ。


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