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乃木坂シネマズ 『街の子ら』について

FODで配信されている「乃木坂シネマズ」、どれも全て面白かったです。
まっちゅんの『超魔空騎士アルカディアス』や与田ちゃんの『嗚呼!素晴らしきチビ色の人生』のように笑えるようなものもあれば、飛鳥ちゃんの『鳥貴族』やまなったんの『Perfect I』のように色々と考えさせられるような作品もあり、監督さんそれぞれの個性が出ているなと感じました。

今回はその中でもまいやんが主演した『街の子ら』について色々考察していきたいと思います。


本作品の世界観

この作品には、
主人公のたけいゆり
※本編では漢字表記が不明なのでひらがな表記にさせていただきます。
タクシー運転手の女性、武井由梨
タクシーに乗っていた謎の少女
の3人が登場します。
この3人の関係性についてですが、この3人は同一人物。つまり、ほかの世界線に存在している“武井由梨”と考えられます。
これに関しては、本編でもタクシーの去り際に見えた名前と病院で呼ばれた名前が一致している描写から、何となくそうかな〜と思った人は多いと思います。
車は過去や未来の接点として様々なドラマや映画で描かれています。(有名なものであれば『Back To The Future』のデロリアン、タクシーでも竹野内豊主演の『素敵な選TAXI』というタイムトラベルを題材したドラマがあります。)
他にも、水族館でどこかへ行ってしまった子供を探しているシーンに出てくる多数の鏡面がある階段も、鏡像=鏡の中に存在するもうひとつの世界を表していると見ることが出来るのではないでしょうか。


何度か起こる吐き気について

作中でまいやんがなんども催している吐き気については最初の病院にヒントがあります。病院にあるポスターに注目してみると、赤ちゃんについてのポスターだということが分かります。つまり、最初にまいやんが行っている病院は産婦人科であり、つわりが吐き気の原因だと推察出来ます。
そして、まいやんは母親から虐待を受け、愛を感じたことの無い幼少期の境遇から、
「自分もこうなってしまうのではないか」
という強迫観念にかられ、子供を育てるという事に自信がもてず、中絶しようとしているのではないでしょうか。
「子供ができなくて夫は出ていった」
と運転手が言っている場面がありますが、運転手が別の世界線の武井由梨だと仮定するならば、子供は“できなかった”のではなく“産まなかった”と捉えることもできます。
そして、
「どちらにしろ決めるのはあなた」
という言葉から、ここが2人の武井由梨の分岐点になっていると考えられます。
最後の場面で看護師に呼ばれた後の、
「あの...」
という言葉は結果、まいやんは産むことを選んだということではないでしょうか。


イルカとクラゲ

終盤、少女が眺めているイルカは親子で泳いでいます。イルカは親子の愛が強い動物として有名です。そこに見とれている少女からは家族愛への強い渇望を感じることが出来ます。その後、まいやんがイルカを眺めているシーンではイルカは1匹で泳いでおり、幼少期の家族からの愛を求めていた心を、大人になるにつれ、奥深くに閉ざしてしまったことをイルカの対比で描いているのではないかと思います。
次にクラゲのシーンについてですが、クラゲは自分で泳ぐことは出来ません。単体で流されるままに泳いでおり、ここではイルカという動物との対比の構図を見せて自らの孤独を描いていると思われます。
1人でむしろ良かったと言っている場面がありますが、同じような境遇の少女との関わりを通して、過去の自分の姿や想いと重ね、自分は本当はどう思っていたのか、どうして欲しかったのかを素直に吐露できたのではないのでしょうか。
「悪いのは私だ」
という言葉には、これから自分がやろうとしているお腹の子供に対する言葉なのかも知れません。


終わりに

長々と作品に対する解釈を書いてきましたが、あくまで個人の解釈であり、最終的には自分がどう思ったか、どう感じたかが大切だと思います。
ただ、(ここはどういうことなんだろう?)(どうしてなんだろう?)という疑問に対する1つの解釈として少しでも作品を鑑賞する助けになれば幸いです。



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