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ショートショートなど(一話読み切り型)

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ショートショート、創作文をここに載せていきます。また、「地味さんに恋して」という日常の地味な存在に対する愛を語った物語も一話完結型で載せていきます。 ※ここに載せる物語はフィク…
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#何気ない日常

♯3 キーボードの「Q」編 【地味さんに恋して】

キーボードの「Q」さんのことですか? ……好きですよ。 「S」や「K」などは、文字がかすれているのに、あの方は依然として美しい姿を保っています。 いつまでも指先の肌の温度を感じられずにいる姿を見ていると、いじらしくなって、たまに意味もなく連打してしまいます。そしてそのあと、無表情でBackspaceを押します。 それでも、やはり何一つかすれることなく、毅然とした態度でアルファベットの端っこを守っていらっしゃいます。 存在は地味ですが、その姿がたまりません。 大好き

♯2 靴下の毛玉編 【地味さんに恋して】

靴下の毛玉さんのことですか? ……好きですよ。 あの繁殖力の強さには驚きます。 特に、つま先部分なんて放っておいたら黒い生地が白になるくらいに、その存在を顕著に示してきますから。 あの方達は、こちら側の手では取り切れなくなってくると、毛玉取り機に刈り取られるわけですが、なかには生地にくっついて、なかなか離れない御方もいらっしゃいます。そういう方は余程、靴下とお別れしたくないのでしょう。 機械にも屈しないという、靴下への深い愛情を感じます。 存在は地味ですが、その姿

♯1 冷蔵庫にたまっていく醤油袋編 【地味さんに恋して】

冷蔵庫にたまっていく醤油袋さんのことですか? ……好きですよ。 あの、どれがいつ追加されたのか把握されていない感じが、何だか守ってあげたくなります。 あの方達は、自分にいつ出番が来るか分からないなか、どんどん追加されていく仲間達を見てもマイナス思考になったりしません。 たとえ後から追加された仲間が、先に取り出されたとしても何も不満を漏らさずに、健気に自分の番を待っているのです。 存在は地味ですが、その姿がたまりません。 大好きです。