8/1(土)晴
夕方原田が来た。
散歩しようと言うので川沿いを一時間ほど歩いた。
原田は殆ど喋らなかった。微笑んでいた、ように見えた。
何も言われないことが何かを示唆しているかのような、無言で幸せを噛み締めているだけの男を横目で眺めているような(何せ彼は私と一緒に川縁を歩くという栄誉に与っているのだ)、変な時間だった。落ち着かなかった。
もっと、もっとなんというか、喋って欲しい。こう書くとアホみたいだな。
彼の眼差しが、肩を抱く手が、キスをする唇が、私をレイラと呼ぶ声が、無邪気なような全て見透かしているような。
いや酔っているだけだな。全て錯覚。彼はただの愚かな被統制階級に過ぎない。
少し可愛いだけの。
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