ラムネ瓶に浮かぶ月

わたしは子供の頃から、
ずっと、あのくぼみに嵌った硝子玉に魅了されていた。どうしてそこにあるのかと。どうしたらそれをこの舌の上で転がすことができるのかと。

綾と詩を。初めての企画は、新月の夜。星たちが始まりを告げる日。

主催者として、まずは、出演してくれた人たちのことを書こう。

「ラムネ瓶に浮かぶ月の夜」音子ちゃんが私たちらしいタイトルだと言ってくれたのが嬉しかった。伊藤詩織さんと早川峻さんは「月と猫」という曲を、音子ちゃんは「お月様」という曲を、月にちなんだ曲を演奏してくれたのもとても嬉しかった。

最初に演奏してくれた、佐々木慧太さんは、わたしの知っている限りではギタリストだったのに、今回はピアノ曲をクラシックさながら最初から最後までぶっ通しで演奏していたのが新鮮だった。彼はただ寡黙にピアノに向かっていたので、その曲たちのタイトルはわからなかったけれど、始終 雪が月光に照らされたような儚いブルーが彼の周りに漂っていた。

一番新月にふさわしい演奏をしてくれたのは彼かもしれない。

伊藤詩織さんと早川峻さんは、顔を合わせた時からまるで双子のようだなという印象がそのまま演奏に活かされていたように思う(顔は全く似ていない)阿吽の呼吸というやつだろう。
夜空を駆け抜ける彗星のような、燃えながら凍える光の瞬きが、花火のようにステージで煌めいていた。

音子ちゃんのステージの雰囲気は、ベッドサイドの明かりだけでウイスキーを舐めるような、琥珀色の夜の部屋。
彼女が歌い始めた頃に偶然出逢って、それからずっと、彼女の声と歌と猫のようなきままさに心打たれている。「秘密の部屋」のような、ちょっとデリケートで大人な歌をうまいこと(しかも一曲目に)歌えるのも、流石だな、と思う。自分のライブの日程を忘れてしまうかわいらしいところも、初めて出逢った頃から変わっていない。

次は、私たちのことを書こう。



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