のんびり投資報告

のんびり投資報告 ・・リラックス③
       <外国人投資家はバリューアプローチが得意?>
外国人投資家は買い場探しにじっくり取り組む
ここで2023年の相場を思い出してみましょう。ウォ―レン バフェット氏が4月に突如、バリュープレイヤーとして東京市場へと登場、自ら商社株を購入すると宣言、その後確かに長年ブックバリュー“1”以下にあった商社株が急騰、さらに同じようにな状況であった都銀株へとその影響が波及、東京プライム市場の上昇に大いに貢献しました。またこれらの銘柄はその株価の位置が低いことによる高配当銘柄でもあり日本人投資家が参加しやすい状況もあったようです。少し旧聞に属しますが、このブックバリューアプローチがもっと大きなスケール感で見られる時がありました。これから紹介するバリューアプローチの事例ともいうべき事象は、市場それ自体の大きな変化を予測していたような動きでもあります。その年代の外国人投資家の買い行動に触れたレポート等はあまり見たことがありません。そのありさまを改めてチェック、外国人の”バリュー“と言われる投資行動の理解の参考になると思われます。
リーマンショックを乗り越えた外国人投資家
2008年9月、リーマンショックが世界中を震撼させます。米国第四位の証券会社リーマンブラザースの倒産です。その影響は金融業界だけにとどまらず全世界へと波及し、経済の停滞を引き起こしました。資本市場は米国、日本も含め総崩れ状態です。その後、西欧の先進国の資本市場は1~2年で回復の道をたどりますが、東京株式市場はその後も回復には至らず低迷状態が4年ほど継続することになります。最大の要因はリーマンショック後に生じた急激な円高です。一ドル¥75程度まで急激に円が上昇、輸出依存型の日本経済は円高により企業業績が大いに圧迫され、これに株価が大きく反応、市場回復が先に追いやられることになっていったのです。注目点はその企業業績が低迷する状況下での外国人投資家の日本株投資です。業績不振が続く中、2008年のリーマンショックの年はともかく、2009年以降、企業収益に目立った回復が認められない中、2012年まで4年間も日本株を買い続けたのです。
           2007年   2008年   2009年  
  日経平均(年末) 15305    8860    10546 
  外国人投資家   54234   -10779   33708

  日経平均(年末) 2010年   2011年   2012年   2013年
           10228    8435    10395   16291
  外国人投資家   19725   28266    28265   151149 
 (単位:億円)
中でも2011年は注目に値します。日経平均は対前年比18%の下げを記録しておりますが、その年、外国人投資家は2兆8266億円の買越しを記録します。なお、その時、東京市場の下値めどを探るプロセスで東京一部市場はブックバリューが¥8000+アルファー程度と言われておりました。外国人投資家は、あたかもそれを見込んだごとく東京市場で買い越したのです。その後の展開は明らかです。2012年の12月に自民党が選挙で勝利を収め政権復帰に成功、安倍内閣の下、円が反転円安へと動き始めたのです。アベノミックス相場の始まります。2013年にはトヨタ自動車の利益が40%と飛躍、マーケットリーダーとなったトヨタ株もほぼそれに見合う分の上昇をみたのです。
外国人投資家は、ブックバリューアプローチの利用価値を熟知
中期的にみて魅力的な企業にもかかわず、「当面業績伸長等の良い話が出て来る可能性が低く下方に向かう株価に対し、長期投資の観点から買い行動のきっかけを作る裏付けが欲しい、とするものから生まれたもの、それがまさにブックバリュー」であったことのようです。将来の利益の復活を想定、ダウンサイドリスクの少ない株価を求める投資スタンス・・・ここではPBR“1”から生まれた考え方・・・とすればやはりそれは広い意味で企業の利益成長を評価する銘柄選択としてよさそうです。ここでは、純資産価値(ブックバリュー)にある株価というだけでは投資の魅力あありません。利益の伸長が見込めることが大前提にあり、まさしくバリューアプローチはその銘柄を底値で買う投資手法の一つということになります。
前回のレポーとで、順張り逆張りに触れましたが、下落する銘柄の買い場探しを見つけるという意味では、バリューは逆張り的要素を持ったアプローチかもしれません。しかし、この順張り、逆張りといった表現はもう少し短期的であり、テクニカルアプローチ(チャートを参考にするアプローチ)よりの表現のような気がします。理屈はともかくとして、外国人投資家は、そうした株価評価を熟知しており、日本株でも着実に実践しているということです。2023年の後半、バフェット氏は日本株を売却したことを公言しております。その意味では、純粋なバリュープレヤーであるかもしれません。多くの外国人投資家は、2013年、利益の伸長を追いかけるグロースプレヤーに変身して、その後の日本株を追い続けることになるのです。
  *次回は2月5日ごろ、銘柄名入り実践史編①スタートする予定です。