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「美味しいな」まであと少し

娘はお腹に口がある
と言っても、娘は決して妖怪の類ではない

彼女は病気のため口から栄養を摂ることはできない
通常、口からミルクを飲むことが難しい子は、鼻にチューブを入れて、胃に直接ミルクや栄養を送り込む
成長に伴い哺乳力が強くなったり、治療により口から栄養を摂れるようになったら、チューブは卒業

しかしながら、娘は先天性食道閉鎖症という病気で、鼻からチューブを入れても行き止まり
そのため、胃に直接栄養を届けるための仕組みを作るための手術を、出生翌日に受けることになった

その後、手術を終えて食道が行き止まりという状況は解消したものの、まだまだ問題があって、お腹に直接栄養をという状況に変わりはない

さて、所謂「胃瘻」と呼ばれるこの仕組み、慣れるまでは‥というか、慣れた今でも何かとトラブルが多い

抜けた
折れた
漏れて服が汚れた
漏れて布団が汚れた
着替えさせたと思ったら、また漏れた
周辺がかぶれた
肉芽ができた
出血した
本人が引っ張った
クレンメを閉じ忘れた
チューブの汚れが落ちない
ジョイントをつけ忘れた
保護ガーゼがいつの間にか行方不明
寝返りの邪魔になる
成長に伴い、体幹まわりの動きを妨げられた
破損したけど、メーカーが休みで代替品が手に入らない
注入ペースを間違えて、一気に満腹にしてしまった
外出時に胃ろうチューブを忘れた
ペースト化が不十分で、少し詰まりかけた

‥多分、考えられる一通りのトラブルは経験したと思う
それでも、それらを補ってお釣りが来るくらいのメリットもあるので、これから手術予定の親御さんたちは、どうか安心して欲しい
我が家の場合は他の手段を選ぶことはできなかったけど、胃瘻という選択は決して悪いものではないと思う
顔のテープ被れ解消は勿論、チューブの閉塞も経鼻栄養と比べて起こりにくい
何より、経鼻用のチューブでは詰まるようなペーストも、胃瘻なら対応できるのは本当にありがたかった
舌で味わうことができない食材も、娘の体はちゃんと知っている

この秋の手術で、娘は3代目の胃瘻を手に入れることになる
歴代の胃ろうに感謝しつつ、本格的に「ありがとう、さようなら」できる日までもう少しお世話になるとしよう

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