Perfume LIVE 2021[polygon wave]感想:チームPerfumeの無念の成仏、そして昇華

8月14日の回を鑑賞しての感想。


polygon wave、演出も3人のパフォーマンスもいつも通りハイレベルで素敵なステージだったことは、これまでのライブ同様でもはや言うに及ばず。

同時に、過去のライブとは全く異質な空間でもあった。

今回のライブを通してPerfumeからは、強烈なメッセージがファンたちへ放たれている。

Perfumeがファンに伝えたメッセージ、彼女たちがライブに込めた思い。

それを私は、

「チームPerfumeの無念の成仏、そして昇華」

と受け取った。


・できなくなったこと

メッセージはライブ冒頭のMCから文字通り雄弁に語られた。要旨・趣旨を抜粋・要約すると、以下のような言葉が続く。

「いろいろなことがあった、できなくなったことがあった、皆さんも分かっていると思うけど」、「私たちだけの、この空間で」、「新時代のパフォーマンスを」。

できなくなったこと。

Perfumeとしてのライブ活動をできない状態が1年半続いた、のみならず、もっと大きな無念と悔しさがにじんでいたように思う。

具体的な言葉では伝えられなかったが、おそらく一部報道でリークされた「MIKIKO案の五輪開会式パフォーマンスへの出演」が「できなくなった」ことを指すのだろうなと推し量られた。

その後に続く「私たちだけの空間」という言葉も、五輪開会式という世界中の観衆にむけたステージの喪失を踏まえてのものだろう。

このMCの解釈・受け取りは、想像で埋める部分が大きいけれど、日頃のPerfumeとファンとのコミュニケーション形式を考慮すれば有り得る範囲の解釈・意思疎通だろうと個人的には思う。

それはPerfumeがファンとの絆、と言うところのあり方で、Perfumeとファンのコミュニケーション形式は、それぞれ別々に練ったメッセージを一方通行で投げるものではなく、双方が双方の「間」にメッセージの卵を置きあい育てあい手を伸ばしあい、という共同作業が徹底された世界だと思っている。

特にPTA会員限定ライブという場で、そうした形のコミュニケーションが、ある種ファンへの信頼に基づいて取られているというのは有り得る話だし、Perfumeらしい空間だと思う。


・わたしたちだけのオリンピック

ライブの1曲目。

ステージに現れたのは10人超のダンサーたち。 ……え?なにごと?

始まった曲は「不自然なガール」。

確かにこの曲は、リリース当時も話題になったPerfume3人以外のダンサーが加わるパフォーマンスが特徴的。でも過去のライブで、この曲のために3人以外のパフォーマーを舞台上に上げることはなかったはず。

不自然なガールが終わるとPerfume3人だけのステージになり、Pick Me Up、再生と曲が続く。真っ赤な衣装が鮮やか。

続けて披露されたのはFuture Pop、TOKYO GIRL。

5G通信のPRとして世界3都市からの同時中継でパフォーマンスを行った曲に、文字通りTOKYOを冠する楽曲。都会の昼夜の風景が、ステージ上にバックの幕に余すところなく濃密に映される。

選曲にも演出にも、「日本を背負い、日本の玄関口たる東京の舞台に立つパフォーマー・Perfume」というイメージが色濃く漂う。

 

ここで再度ステージ上にダンサーたちが現れた。見慣れない舞台装置とともに。

ダンサーたちはステージ上に小さなもう1つのステージを運び込み、その上でPerfume3人がI still love Uを歌い始める。

 

小さなステージは、まるで即席の表彰台のようだった。

冒頭のMCの言葉が再び立ち上がってくる。

3人をとりかこむ、通常のPerfumeのライブでは例のないダンサーたちの存在は、単なるPerfumeのライブとは違うある世界を見せるための存在なのだと、新たに確信する。

 

私たち観客が見ているのは、Perfumeたちがかなわなかった五輪開会式のステージの再現なのだ。

1曲目の不自然なガールでダンサーたちとのパフォーマンスを見せたのは、ライブ前半は五輪開会式の再現に向けた舞台だというメッセージだった。

 

Perfumeたちによる、Perfumeたちのオリンピック。

わたしたちだけの小さなオリンピック。


・区切りの儀式、無念は成仏した

I still love Uが終わるとダンサーと即席の台は捌けて、再び3人だけが残る。

続く曲はマカロニ。PVのイメージ同様、3人の長い影がステージいっぱいに伸びる。

ふと気付く。舞台から色が無くなっていた。

3人の衣装は、冒頭の赤いものから真っ白な衣装に変わっていた。

舞台演出の光も、I still love Uでは白色メイン、マカロニではセピア色の世界が広がる。

ついでに言うと、選曲もどこか未来の見えない雰囲気を帯びている気がする。既に終わった恋への未練と、暖かく優しい世界なのにどこか不安の拭えない、いつか来る終わりの予感。

 

煌めく都会の舞台から色の無い世界へ急転した景色は、この2曲に続く表現で強烈に完結する。

「転換 -今 それを届ける-」。

徹底的に暗いモノクロの世界で、Perfumeの3人は一度存在をなくしかけ、再びその姿を取り戻していく…そんな表現だったと受け取っている。

「黒い髪、黒い瞳、黒い影…私/キミ/みんなの、声/存在/気配…私を私にしてくれる」

「でもそれは届かない」

「白い肌、白い気持ち…私が私になっていく」

アイドルらしさを形作る要素のことばも含む一連の語りは、ポリゴンウェイヴ開催まで彼女たちに積もっていた無念さや悔しさや虚しさ、そんな暗く深く濃く苦しい黒い澱のようなものの存在と、それと決別して彼女たちがアイドルPerfumeとして再び輝く準備が整ったことを示していた。

 

3人のパフォーマンスが再び始まる。最新曲のポリゴンウェイヴ。

Perfumeは新たな第1歩を踏み出したのよと高らかに宣言するかのように。

曲は無限未来、GLITTERと続く。いずれも祈りが込められたような2曲は、引き続き彩色の控えめな演出で繰り広げられるけれど、そこで強調されるのは暗い影ではなく明るい白い光。

 「できなくなったこと」に対するPerfumeたちの無念には、ここで明確に区切りがつけられた。無念を成仏させた彼女たちは、ここから真に再出発していくのだ。


・再生と、Perfumeたちの新しい世界への昇華

GLITTERが終わると、恒例のP.T.Aのコーナーの時間。

明るくきらきらと前を向くPerfumeの世界が完全に帰ってきた!と思った。

ファンクラブ限定だからか、振りコピタイムもけっこう曲数が多めで(鍛えられた粒揃いの粒たちが一瞬で振りコピをクリアしちゃうため)いつも以上に長い時間楽しんだ気がする。

というかPerfumeの3人がそもそも本当に楽しそうだったもん。

 そしてひとしきりもふたしきりもP.T.Aのコーナーを満喫した後、あ~ちゃんの「この先はブチあがる曲しか持ってきてません!」な宣言に続いたのは、カラフルな映像演出とともに本当にフロアが沸きに沸くハッピーな曲ばかり。

いきなりのFAKE IT、大感謝のポリリズム、Time Warp、Miracle Worker…。

 中でも特筆すべきはTime Warp。

ダンサーたちが再び現れ、3人が立つメインステージの周りに張り巡らされた道の各所に散って、街中の通行人のようなパフォーマンスを繰り広げた。

その姿はPerfumeの街の住人であり、かつて東京を背負っていたPerfumeは、今やPerfumeたちのオリジナルの街を作り上げていた。

ライブ前半で五輪開会式を再現すべく現れたダンサーたちは、Perfumeオリジナルのステージのために、Perfumeの世界のために動いている。

Perfumeたちが、コロナ禍の活動制約や五輪の舞台の夢潰えるといった壁を突き抜け、飛び越え、Perfumeたち自身のための新たな表現形態の一つの答え、チームPerfumeの新しい世界に到達したことを示すようだった。

 

少し話が脱線するけど、Perfumeのパフォーマンス形態の見直しについては、ニューノーマルといった話だけではなく絶対的に必要になってくるはずなので、ある意味今回の大きなつまずきをその機会に変えたと言えるかもしれない。

と言うのもPerfumeの年齢やライフプランを考えたとき、3姫が広い舞台に立って踊るパフォ―マンスがあと何年できるだろうか?というのは正直常にちらつくので、どこかの時点で身体的負担への配慮や、年齢・キャリアを重ねたことが活きるような表現の形を模索することが必須だと思う。

その意味ではダンサー等の要素を3人が操ったり、種々の要素を盛り込んだステージ全体として見せていくというのも模索の選択肢の一つかもしれないと思ったり。

 

閑話休題。

Miracle Workerの後のMCは、3人の思いの丈が本当に溢れまくって、Perfumeもファンも互いに泣き笑いみたいなことになっていた。

3人とも今回のライブが本当に楽しかった、こんなに笑いとおしたライブは初めてかも、とそれぞれ口々に伝えていて、ファンの拍手が止まないこと止まないこと。

そしてMC後のMy Colorまで含めて、結局のところもうあったかいあったかいPerfumeの世界がただそこにあった。

最後の新曲「ミラーボール」は初聞きだったけど、ファンへの感謝と、Perfumeたちの長じていっそう増す謙虚さと、アイドルとして輝くことへの自己犠牲的なまでに強い決意が語られていて。3人のピュアな情熱が切なくて、ファンとしても彼女たちをいっそう応援して見届けなくてはという気持ちを新たにしたというか。

曲ひとつでこうしたコミュニケーションをとるのがPerfumeの世界なんだなあということも改めて再確認。

3人はじめチームPerfumeは今回、本当に大きな大きな挫折に直面したはずだけど、そこからこうも力強い再生の舞台を見せてくれるのが本当に素晴らしいことで、すさまじいことで。

こうしてPerfumeの物語ってどんどん強く太くなっていくんだなあ。

 

 

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