あのこ



昔の友達が死ぬ夢を見た。

小学校の帰り道、その友達が「自分はもう死ぬ。それがわかったから貴方に感謝を告げに来た。今までありがとう。」と私に言った。そして目の前でダンプカーに轢かれて滅茶苦茶になって死んだ。

目を覚まして暫し混乱した。友達が死んだ。これは夢か現実か?今思い返せば混乱するまでも無いのだが、寝起きの脳みそというものは驚く程に冷静で居られない。昔の友達だからとはいえ、姿形と名前が結びつきすらしていなかった。

少しづつ整理が出来てきた。
まず名前を思い出した。そして確かに小学校の時に家まで一緒に帰っていたのはあのこだ。特に高学年の間で、寄り道してパンを買って互いの家でテレビゲームをした。

しかしあのこがダンプカーに轢かれて死んだのは、夢だ。まず「私はもう死ぬ」なんて予知がこの現実世界で出来る訳が無いし、本当にこの町でダンプカーに人が轢かれていたら、外は大層大パニックであろう。これは夢だ。

全てが分かって、全て思い出して、もう一度眠った。深い悲しみの波に揺蕩いながら。

そうだこれは夢だった。私は小学生でもないし。それに、あのこは数年前に、現実で死んでいる。

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