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LITTLE GODZILLA_養育里親とは?

?メディアでは当たり前のように児童虐待のニュースが流れ、コメンテーターが「どういう神経をしているのか分からない!!」という台本かのようなコメントが繰り返されています。確かに、子どもを傷つける以外にも、ネグレクトや棄児など様々な虐待は、まるでテレビの向こう側の世界だけで行われているような感覚があり、少し周辺を見渡したくらいでは放置された赤ん坊も、裸で彷徨う子どもも視野に入ることはありません。
本当にそんな世界が僕らのすぐ近くにあるのだろうか?あるとすれば、その親は実際どんな神経なのか?そんな素朴な違和感から始まり、今、“養育里親”という制度に出会いました。ここでは日本で家庭養育を受けることができない子どもたちの現状とそれを解決するための一つ、養育里親について書き進めます。血は繋がっていないけど構成される家族の在り方とは。


4万5千人もの子どもが
家庭環境上養護を必要としている


社会的養護の現状
日本では、保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として、社会的に養護を行いますが、対象児童は4万5千人にも及びます。

平成27年度の里親などへの新規措置児童のうち「父母の虐待」が全体の28.3%を占め、これ以外にも様々な措置理由区分があります。

里親、乳児院、児童養護施設における措置理由
【区分 - 児童数 - 割合】
父母の死亡 - 222 - 2.6%
父母の行方不明 - 138- 1.6%
父母の離婚 - 134 - 1.5%
父母の不和- 99 - 1.1%
父母の拘禁 - 223 - 2.6%
父母の入院 - 495 - 5.8%
父母の就労 - 206 - 2.4%
父母の精神障害 - 914 - 11.3%
父母の放任怠惰 - 953 - 6.1%
父母の虐待 - 2384 - 28.3%
棄児 - 33 - 0.0%
父母の養育拒否 - 740 - 8.8%
破産などの経済的理由 - 392 - 4.6%
児童の問題による監護困難 - 388 - 4.6%
その他 - 982 - 11.7%
合計 8402 - 100% 

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※里親措置に絞ると「父母の虐待」17.3%よりも「父母の養育拒否」18.9%が最も多い措置理由となる。


そもそも社会的養護とは
養育里親とは

社会的養護とは保護者のいない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を公的責任で社会的に養育し保護すると同時に養育に大きな困難わ抱える家庭への支援を行うことを指します。
社会的養護が必要な子どもたちは、法律上与えられている権利を奪われるという「喪失体験」をしています。多様な家族背景があり、僕たちが“当たり前”と思っている固定観念の枠を超え、様々な悩み、問題を抱えています。
このような子どもたちを社会的に養護するための制度の一つとして“里親制度”が存在します。この里親制度にはいくつかの種類が存在します。 


〈里親制度の種類〉

A 養育里親
B 養子縁組里親
C 親族里親

今回はAの養育里親にフォーカスしていますので、B,Cの説明は簡単に済ませます。
Bの養子縁組里親とは、要保護児童を養育することを希望し、養子縁組によって養親となることを希望する人のことです。一般的に“里親”のイメージはこれが強いのではないかと思います。
そして、養子縁組里親は血の繋がっていない人でも対象になるのに対し、血の繋がっている親族が要保護児童の両親(扶養義務者とその配偶者)に代わって養育する場合をCの親族里親と呼びます。
そして、養育里親とは、何かしらの事情があって家庭で育てられない子どもを一定期間その家庭に代わって養育する里親のことを指します。事前研修を受ければ、登録することができ、夫婦のみというわけでもなく独身の方でも登録することができます。最大の特徴としては2つです。

1つめの特徴:児童は籍を移すことはありません。児童は元の家庭が養子縁組里親に帰ることを前提とするため“別れ”が訪れます。

2つめの特徴:養育期間の幅が広いです。短い時は1日。長ければ18年間の場合もあります。長期の場合でも1つめの特徴は変わりません。

このような特徴を持つ養育里親は、全国に約9,073世帯の登録があり、3,180ほどの世帯が実際に養育を委託されているという状況のようです。そして、養育里親に委託されている児童人数は約3,943人になります。その他の里親制度によって委託されている児童人数を足すと、5,190人です。
この人数が多いのか少ないのかで言えば「圧倒的に少ない」です。他の40,000人にものぼる子どもたちは、家庭的な環境ではなく「施設」という集団生活を強いられる古典的な環境で暮らしています。家庭的ではない環境に暮らす子どもたちは、数名から数十名が同じ箱の中で、限られた職員の方と過ごすため、必要な時期に特定の人(父や母など)からの愛着を形成することができません。そのため施設環境ではなく家庭環境での養育が推進されています。繰り返しますが里親での委託数は少なく、まだまだ“家庭と同様の養育環境”が足りない状況となります。

※愛着形成は“非認知能力”に大きく影響を与えます。別記事で紹介します。

養育里親になる理由
どのような方が養育里親になるのか?里親支援機関のキーアセット(NPO法人)の方に話を伺っていると、委託する側にも様々な理由があるようです。子ども好きや社会支援、学び、やりがい、喜びなど里親になった人たちの想いは様々なようです。(実際に里親さんの話を聞く機会がありそうなので改めて書きたいと思います。)

さて、里親になる人たちの話で終わるわけもなく、これは僕自身のストーリーです。ここからは僕が里親になろうと思った経緯や考え、現状を書き進めます。ただし、この内容は、別に里親を啓蒙するためではありません(増えたら良いなとは思います)。

里親制度のプログラムには、今、もしくはこれから子育てする人にとって支えになる知識やマインドが深く構成されています。里親になるためには“親”という在り方を再認知し、“子ども”という存在を理解するためのワーク(研修や講義)をしなければなりません。そして、実際に委託されたときには様々な葛藤(感動)を何度も経験します。つまり、里親の人たちは、僕たち親が普段、忘れがちな子育ての本質的な考え方や子どもへの理解を、日常の中で繰り返しマインドセットしているのです。だから、里親になるこのストーリーは僕自信が“親”としてアップデートする良い機会だと考え、これを書き留めていきます。
また、身近に支援してくれる存在がなく、制度にサポートしてもらいたいのに罪悪感に縛られて勇気を出せない真面目な親が潜在していると思っています。Twitterで少し検索するだけで親の小さな叫びを確認することができます。そんな親たちが気軽に支援を求められる空気感が大切だと思います。

僕たちはなぜ子を生み育てるのか、血は親子に必要な条件なのか、一人で抱え込む子育てを解放できないのか、手探りですが経験したことを軸にしてそのヒントをnotoに綴り共有したいと思います。


参考:家庭福祉課調べ(「社会的養護の現況に関する調査」)
参考:里親数など 福祉行政報告例(平成29年3月末現在)

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