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しむと建て物の感想04-私にとって沈ゆうこは何者なのか-

「趣味の演劇に、一緒に来ないか」そう言われて平日の夜に池袋に向かったのが沈ゆうこさんとの出会いだ。「池袋ポップアップ劇場 」といういくつかの劇団が短編を演じるショーケース方式の舞台で、彼女は青菜を探していた。「西友にて」という題名のスーパーで繰り広げられる店員と客の物語。

それが初めての観劇だった。「観劇なんて」とは思いはしなかったが「つまらなかったらどうしよう」という気持ちはついて回った。なんていうか、あんまり人から薦められたものに感動できないタイプなので。それに、マナーもわからなかったからずっと黙って見ていた。「緑の派手なストライプのシャツを合わせたスーツスタイルで来てしまって、ただでさえ視界に入っては迷惑だろうに、この人達の邪魔をしてはいけない!」と真剣に思っていた。

見終わった後に、誘ってくれた方と感想を話した。一生懸命、話したと思う。何を話したのかはあんまり覚えていないのだけど、そもそも人がエネルギッシュに動いているのが面白いという話をした。こういった情勢だから余計にそう思ったというのもあるのだろう。その中で「あの子が良かった」と意気投合したのが、沈ゆうこさんだ。

その後、しばらくして「そういえば青菜の女の人って誰だっけか」と思って調べて彼女の名前を初めて知って、検索結果から出てくるTwitterのアカウントをフォローした。ある日「引っ越すから住んでいる家の写真を撮って本にする」と言っているのを見て、センスの良い人だなと思った。「これは残しておこう」と思ったのが良いというか。思い出って本当は、こういう風に自覚的に作るものがあるんだと思う。

ただ、いつまで経っても「しむと建て物」の発売のアナウンスがされない。今か今かと首を長くして待っているうちに、沈さんがYouTube配信をしていることを知り、スプラトゥーン3の配信が始まった。「初見です」といっても信じてもらえなかった。演劇の面白さと同じくらい「小劇場俳優として生きる人」に興味が湧いていたので、夜中までプラモデルを作ったり、ブログなりなんなりの記事を書いている日とかに、だらだらと過去の雑談配信を流したりして、一方的に理解を深めていった。

この人は何が好きで、というか、どういう愛で方をするのかとか、どういう思考をするのかとかをぼんやり考えながら雑談を聞いていた。カイジは「”うわーっ”だとか”どっちだー”っててなっているのが楽しい漫画なんだ」という話は、そのとおりだ思ったりもした。


雑談を10周くらいして、雑談配信がライブで始まったときに「ホラーの面白さとは」みたいな質問をしたら懇切丁寧に話してくれたのを覚えている。好きなものをしっかりと説明できる人で、論理の繋がりのキレが鋭いなと思った。それに私の中では「先天性のインカム人間」の話で、沈さんが「これで正解なのかわからん」と話していたのが印象的だった。

あまりにも衝撃を覚えたので会社の仲のいい先輩に話したら「今の世の中は検索すれば正解っぽいものが出てくるけど、本当の正解って自分で決めるしかないんだよね。知りたい答えのために、行動するというのが一番の正解なんだけど、今はそういうことをする機会がないじゃないか」といつになく真面目に話してくれたのを覚えている。

沈さんがどういう人かは、彼女の言葉や活動を通じてでしかわからないんだけど、配信ではなんとも愛おしい(そして今後トレンドになると数年前に言われていた横長の顔の!)Live2Dが動くし、描かれた部屋には自分が出演する舞台のポスターを貼るマメさもあったりする。そういう様子を見ているとなんとなく「ああ、こういう人なんだろうな」と感じるところもあり、気づいたら目が離せなくなっていた。


今後も製作記と他愛もない話をセットで書ければと思います。 サポートしてくださると嬉しいです。