AtoC

(いかんいかん..なんだか悲観的な事を考えてしまった。)

カランコロン。

ドアベルが鳴り、ハッとした。

ノートパソコンに集中するあまり

店内が混雑している事に全く気づかなかった。

店員の目線が心なしか痛い。

一杯のコーヒーだけで1時間近く滞在しているのだ、

さすがにそろそろ出ようと思い立ち上がろうとしたその時、

僕の視界の右側に、奇抜な男が立っていた。

思わずそちらに顔を向ける。

(なんだこの男....?いや...本当に男だろうか...なんだか女の様な顔立ちをしている.....何故無言で立ちすくしているのだ..?気味が悪い..)

なんだか異常な気配を感じた。

あまり関わってはいけない様な、

形容しがたい雰囲気を芳していた。

花でいう処のラベンダー、花言葉は「不信感」。

これから仮称として謎Aと呼ぶ。

僕が立ち去る隙も無く、謎Aが口を開いた

「エキュスキュウズミゐ相席宜しいでしょうか。」

そう言いながら、僕の許可も無く向かいの席に座ったのだ。



疑念を抱きながらも周りを見渡した、

夕飯前の時間帯にも関わらず、席が一つも空いていないようだ。


困惑しつつ、謎Aの容姿に目をやると

髪は長く金髪で、某有名スポーツブランドのジャージを着ていた。

なんでこんなヤツが喫茶店なんかに来るんだ、

まして相席なんて、相当頭がおかしい。

どちらにせよ、もう帰ろうとしていたのだ、

会釈だけして帰ろう。



その時だった、また謎Aが口を開く。

「僕、家が無いんです、ここの喫茶店のお代も払えません」

そう言って笑っていた。

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