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4Gオトモの特異性と後のシリーズに与えた影響

 MH4Gでは前作のMH4と比べて、オトモにも様々な要素が追加され、大幅にパワーアップしたということは周知の事実だろう。しかしこれらの追加要素には明らかにそれまでのモンハンの常識から逸脱したもの、またそれらの中で後のシリーズに別の形として実装されたものがいくつか存在する。この記事では4Gオトモの異質な部分、後の作品に与えた影響を解説していく。


4Gオトモの特異性

1. ビースト、ジャンプトレンドの存在

 ビースト、ジャンプトレンドは4の段階では存在せず、4Gで満を持して登場してトレンドである。新しいトレンドということでこの2つのトレンドには他とは明らかに異なった斬新な能力が備わっている。
 まず「ビースト」トレンドは攻撃重視のトレンドなのだが、純粋な攻撃に加えいわゆる「吸血攻撃」、「吸気攻撃」が備わっている。より具体的に話すと、「吸血攻撃」はオトモが特定の攻撃をすると、HPを回復しながら相手にダメージを与えるというもの、「吸気攻撃」は攻撃した相手のスタミナを減少させつつ、味方に強走効果を与えスタミナを回復させるというものである。「吸血攻撃」に関して言えば、モンハン4G時点でこういった効果を持っているのは武器の極限強化【生命】くらいなもので非常に貴重な効果である。また「吸気攻撃」も、相手のスタミナを削る「減気攻撃」はあるが、スタミナを奪い取るというのはなかなかに斬新な効果であるように思われる。
 そして「ジャンプ」トレンドはその名の通り「ジャンプ」系統のアクションを補助・強化するトレンドである。主なアクションは、接触したハンターを空中に飛ばす「ネコ踏台の術」、乗り攻防中のハンターを支援する「乗り支援笛」などである。前者はXシリーズの「トランポリンの技」、後者はXシリーズで実装された乗り中のモンスターに攻撃を加えて支援する仕様に酷似している。後に述べるように明らかにXシリーズを意識した性能となっている。

2. 合体技の大雑把な調整

 4Gシリーズでのオトモの追加要素として「合体技の強化」が上げられる。ご存じの通りオトモを、一気に下手な悪魔ネコをしのぐ強さを持った存在へと昇華させた追加要素であるが、有識者の間ではこれは「バランス調整のミス」による代物ではないかと噂されている。
 1つ目の例として、みんな大好き突撃隊の合体技属性術である。これは3分間相手の全身の属性肉質を+20するというものだが、シリーズ経験者なら分かる通りこれは明らかに異常な効果である。相手を弱体化させるデバフ効果だけでも非常に稀なのに、属性肉質が20あれば弱点と言える環境で問答無用で何のデメリットも無く属性肉質を+20(しかも全身)してしまうのである。もとから弱点属性の相手でも属性ダメージがだいたい2倍に跳ね上がるという、属性攻撃強化スキルも真っ青のイカレた倍率だ。しかもなぜかバグで超大型モンスターにも効果が発揮されてしまう。
 2つ目の例として、応援楽団の合体技属性術を挙げよう。これは応援楽団の効果に加え、ハンターの属性耐性を一定時間+30するというものだ。1つ目と比べると控えめに感じるかもしれないがこれもなかなかに狂った数値だ。狩猟笛のバフ効果で得られる数値で+10、15ptのスキルポイントで得られる効果でも+20である。しかもこれはあくまで応援楽団のオマケに過ぎず、ハンターのHP回復、HP・スタミナ上限+40 or +50、オトモのHP全快というこれまた大概な効果も付いてくる。明らかにオマケで出していい数値の域を超えている事が分かるだろう。140テオのスーパーノヴァが耐えられてしまうほどだ。
 そして最後に合体技大改造の術を紹介しよう。突撃隊に付くと、基本効果に加え相手に強制ダウン効果を与える。相手の蓄積値に関係なく当たれば強制ダウンというのもなかなかに珍妙で強力な効果だ。応援楽団にこのスキルが付くと、一定時間ハンターのHPが自動回復する。これもこの時代には非常に珍しいリジェネ効果を持つもので、バランスを壊しかねない強力な効果となっている。
 

 このように4Gの合体技はテストプレイをしたのか本当に疑わしくなるほどの、かなり大雑把なバランス調整となっている。これは後に語るように、制作陣が、4Gのオトモアイルーを使って後続のシリーズのシステムをテストする、つまりプロトタイプ的な役割としてオトモの強さを設定したためではないかと推察出来る。

後のシリーズに与えた影響

1. 狩技(MHXシリーズ)

 Xシリーズ以前のモンハンは、派手なアクションがウリのゴッドイーターなどとは差別化されたいわゆる「ハンターが武器一つでモンスターに挑む硬派な狩り」に焦点が当てられていた。そのためFFのリミット技のような「必殺技」の概念が希薄であった(ガンランスの竜撃砲やチャアクの超高などは必殺技っぽいが、いわゆるロマン技的な扱いに留まっていて依然として普通にボコスカ殴ったほうが強かった)。Xシリーズからはモンハンの路線も大きく変わり、ハンター自身が大技である「狩技」を標準搭載し、鉄と血の匂いがするモンハンからケレン味あふれるド派手なアクションとエフェクトで魅せるモンハンへと変貌した。
 さてこのXシリーズのウリとなった狩技だが、こういった「必殺技」の概念はどのようにもたらされたのだろうか?私はこの要因の一つにオトモが協力して放つ大技「合体技」があると考える。

 「合体技」と「狩技」とは全くの別物に思われるかもしれないが意外と共通点は多い。
 前述の通り応援楽団 + 大改造術でエリア内にリジェネ効果が発動するが、これは狩技の「狩人のオアシス」や「治癒の盾」系統の狩技に明らかに効果が似ている。偶然の一致のように感じるが、Xシリーズ以前にリジェネ効果を持つ行動が合体技以外に存在しなかったことを考えると、「合体技」より着想を得てこういった狩技を作った可能性が高い。
 また前述の通り合体技は非常に強力な効果を持つものが多く、属性チャアク + 突撃隊の組み合わせでモンスターが超高を3、4発撃つだけでG級の古龍が即死することもあり、まさにそれまでの狩りとは一線を画す「必殺技」である(一発当たりのダメージが大タル爆弾G40発分の破壊力に及ぶことさえある)。これはまさしくXシリーズの獣宿し、オーバーリミット、剣鬼形態、妖刀羅刹などの一気にステータス・ダメージを跳ね上げる狩技を彷彿とさせものである。

2. ニャンター(MHXシリーズ)

 ニャンターに関して言えば、はっきり4Gのオトモの影響を強く受けていると断言できる。
 例えば「トランポリンの技」は「ジャンプ」トレンドの「ネコ踏台」とほぼ同じであるし、「強化咆吼の技」や「治・ローリングの技」もビーストの攻撃パターンに酷似している。合体技であった「ネコ式火竜車」も形こそ違えど参戦している。
 またオトモのトレンドシステムも、仕様は若干異なるが4シリーズ系列独自の「トレンドシステム」を採用している。Xシリーズのオトモは3rdのものに近いと言われているが、このように4系列の要素も強く影響していて、お互いのいいとこ取りをしたシステムであると言える。
 そして何よりXシリーズはニャンターにとても力を入れているというのが何よりの証拠である。MHXの開発の計画がMH4の開発途中あたりで既に始まっていた事を考えると、ニャンターのテストがてらMH4Gのオトモを使って新しいオトモのアクション・スキルをテストしていたというのは十分考えられる話である。もしかすると「ビースト」や「ジャンプ」が4G時点で他のオトモから大分浮いていた事を考えると、その時の副産物かもしれない。

3. クラッチクロー(MHWIB)

 アイスボーンで登場したクラッチクローは簡単に言えば、モンスターの体にしがみつき、傷つけて肉質を軟化させたり、吹っ飛ばしてダウンを取ったり出来るものである。この文を見てピンと来た人もいるだろう。これはネコ式突撃隊 + 合体技属性術の「モンスターにアイルーがしがみつき、ポカポカ殴ってダメージを与えつつ属性肉質を一定時間軟化させる」という効果にそっくりである。これは偶然の一致ではない。モンハンには攻撃力UP、痛撃、挑戦者などのダメージをアップさせたり、ステータスをアップさせたりするバフ手段は豊富に存在するが、相手にデバフ効果を与える手段はワールド以前ではほとんどない。その貴重なデバフ手段の一つがこの合体技なのである。MHWの開発スタッフがMH4の開発スタッフと被っていることも考えると、合体技から着想を得てクラッチクローを実装させたというのはありえない話ではない。

まとめ

 このように4Gのオトモは一見するとそれまでと変わらず地味なものに感じるが、実際のところはそれまでになかった要素を詰めに詰めまくった開発ミスを疑うほどの前衛的なものであり、後の作品の要素にも大きな影響を与えた事が分かる。MH4Gのオトモは、新しい要素を本格実装する前に作られたプロトタイプ的な役割を果たしていたのかのしれない。


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