やっぱりワニが好き
この間の「情熱大陸」がワニ研究者さんの回だった。福田雄介さん。オーストラリアのダーウィンで野生動物の保護・研究をしているラボの、ただ一人のワニ担当だ。同僚たちのヒゲがごつい。ヒゲさんたちは「そのヘビ噛まない?」とスタッフに聞かれて「ときどき噛む」と答えていた。
大きなイリエワニがたくさん映って眼福だった。ワニはやっぱり口がいい。子どもの落書きみたいにギザギザした牙がたくさんのぞく口。外に飛び出してるのも八重歯みたいでいい。あんな湿地にいるのに腹を見せると白くピッカピカしているのもいい。
福田さんは「ワニの味方をする」ために生まれてきた、と言っていた。「怪獣を見たい」ような気持ちは確かにあると認めた後、“ただし怪獣っぽくあれば何でもいいわけではなく、ワニは何かの代わりではなく、ワニが好きだ、ワニこそが好きなのだ”ということを猛スピードで補足していた。
休日に自前のボートを走らせて立派なワニの正面顔を写真に撮りながら「あれがいてほしいんですよ、未来永劫いつまでも」と言っていて、なんか分かるなあと思った。
番組内で「ジャンピング・クロコダイル・クルーズ」のシーンも流れた。リバークルーズ船で川を行き、ガイドが生肉を吊り下げた竿を川に差し出して、ワニが川からジャンプして肉に食いつくところを見物するツアーだ。調べてみたら1時間で65オーストラリアドルだった。
福田さん目線で見たこともあり、これはダメなやつだという気がすごくした。より高いジャンプを促すためか、ガイドはエサをひょいと上にやってイリエワニをからかうような仕草も見せた。ちょっと嫌な感じだ。ワニ映画なら真っ先に食べられる人だ。
とはいえ、わたしもそんなに“きれいな”ワニ好きでもない。
ワニを好きになったきっかけは絵本だった。レオポルド・ショボーの「年をとったワニの話」。年をとったワニがタコの彼女と旅に出るけど、夜ごと彼は彼女の足を食べてしまうので、彼女はどんどん小さくなっていき、やがて彼女は消え失せ、彼は旅の道連れをなくす。でも別に罰が当たったりはせず、退屈で平和な余生を彼は送る。
この物語のどこが好きか、よくわからない。わたしがまだ若かった頃に読んだ本で、今も家にある。
ショボーは彫刻もやるし小説も書くし、外科医でもあったらしい。1870年生まれ。第一次世界大戦で妻と二人の息子を亡くし、戦後には、水彩画「怪物の風景」シリーズを始めた。と、Wikipediaに書いてある。第二次世界大戦のとき、友人宅へ身を寄せている間に死亡したようだ。1940年。これもWikipedia。
絵本が入口だったので、わたしは長年、ワニを描いた絵が好きだった。絵葉書やしおりやハンカチや、やっぱり絵本などだ。見つけるとはしゃぐ。ラコステもよく着る。
この数年はワニ映画も好きなような気がしてきた。動物パニック映画通の人なら、もはや動物パニック映画が怖くないんじゃないかと思うけど、わたしはしっかり怖い。夢に見る。だからこそ好きなんだと思う。怖いは面白い。ひどいも面白い。『ザ・プール』とかいい。Amazonで星2.1だけど。
しかし、ワニ映画のワニは主役でありながら悪者だし、人間のほうの主人公に最後は爆破されたりする運命なので(ワニ映画の約2分の1は、ワニの退治方法に爆弾を選択する)、ワニ好きとワニ映画好きは本来なら並び立たないのではないかという気もする。
それでも、映画のおかげで、リアルっぽい見た目のワニも好きになって、たぶんそれがきっかけでわたしはガチワニを見るのもいまや好きである。WOWOWやBSプレミアムやナショナルジオグラフィックの野生動物ドキュメンタリーで彼らがちらっと映るとうれしくなる体になった(ナショジオは今、月曜から水曜の朝4時からサメの番組をやっているくせに、ワニの番組はない)。
今は、7000円する図鑑を買おうかどうか迷っている。いちおう迷ってはいるけど。きっと買ったりするんじゃないかと感じてる(陽水風)。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?