卵焼き器とわたし、

tl;dr

買ったからすぐに焼けるというものではない(器具のビルド)

買ったからすぐに焼けるというものではない(技量……)

はじまり

ふと、家で居酒屋みたいなだし巻き卵が食べられたらしあわせじゃあないのか、と思った。家庭のお弁当に入っているような甘ったるいかた焼きの卵焼きじゃなくて、出汁が効いたふわっふわの出汁巻だ。それを日本酒をちびちび飲みながらつまむ。想像しただけでドーパミンが脳に溢れてくる。

というわけで、卵焼き器を買った。卵焼き器は鉄製やら、ステンレス製やらがあるが、銅製だ。卵料理には銅一択、先人がそういっていた。ただし、今まで出汁巻なんて作ったことがないし、ちゃんと費用対効果が出せるか自信がない。12cmの安いものにした。当時、余っていた千円ぐらいの楽天ポイントを使い切りたくて、楽天で、送料込み3200円ぐらいだった。

なお、なんの技術的制約があるのか不明だが、銅製の卵焼き器にIH対応のものは存在しない。メルカリなどでも卵焼き器をチェックしたりしていたが「たぶんIH対応」と書いてあるものは嘘なので騙されないように。残念ながら我が家はIHで、それでも実際に使えるのか試してみたが、IHは反応しなかった……。無情……。仕方なく卓上コンロを使っている。

一般家庭で金槌なんてあるわけねーだろ!!!

実際に卵焼き器が到着して驚いた。よくみてほしい。

柄が分離していて、釘が付属している。これを装着して使えというのだ。わーい、出汁巻だとうかれていたわたしは一気に地獄へと落とされた。この状態で届くとは、説明を良く読まずにぽちってしまったわたしが悪いのだ。不覚であった。だが、一般家庭に金槌なんてあるわけねーだろ!!! 日曜大工やるわけじゃぁねええええーんんだからさぁぁああ。プラスやマイナスドライバーとはちがうんだぞぉおおお?

冷静になって家探ししたらあった。小さい、なににつかえるんだこんなもん? ってやつが。

だが、とてもこの小さな金槌で釘うちができるとも思えない(ほんとうにこの金槌の存在意義とは?)。柄にはガイドがなく、釘は小さい。が、あきらめたらそこで試合終了、わたしは挑んだ。

釘は刺さらない、釘を固定するために指を添えていたが、ミスって指を打ち付ける、痛い……。誤って釘ではない箇所を打つと、当然傷つく。これは一体なんの苦行なのだ? 指に当てるのが怖くて恐る恐る弱い力で打つ(それでも指にヒットする)。そろそろ刺さってきたかな? と指を離すと釘がぽろっと溢れる。

少なくとも15分ぐらいは格闘した。そして、わたしは敗れ去り、卵焼き器はその真の姿を現すこともないまま、そっとしまわれたのだった。

〜完〜

釘打ちできなくてもいいじゃない

一旦卵焼き器のことを忘れて、身体を休めていたが、やはりどうしても卵焼き器のことが脳裏に焼き付いて仕方なかった。一度負け犬根性が染み付いてしまうと、それがくせになって、今後の人生にも影響を与えるとどこかのまんがでみたことがある。もしかして、これは勝負所なのではないか。ここで、卵焼き器を完成させられなかったら、きっと、わたしは一生、家で出汁巻を食べることがないだろう。その遺恨は未来永劫残り、わたしを苦しめるに違いない。晩酌のたびに卵焼き器に思いを馳せるようになるにちがいない。わたしは再挑戦することにした。

しまってしまった卵焼き器(部品)とガラクタ同然の金槌をひっぱりだし、また釘やら指やら金属部分やらを打ち付ける。

どのくらい時が経っただろう。それは、一瞬だった。

「あっ」

少しの油断だった。釘はぽろりとわたしの指をすり抜け、彼方へと転がっていった。床をまんべんなくみても、もう見当たらなかった。釘は完全に消えてしまった。わたしの手には、卵焼き器本体と柄のみが残った。

なんかもうそこで完全に吹っ切れたので、柄を器具にぶっさして、ガンガンと器具に押し込むように柄のケツを金槌で叩いた。とりあえずぐらつかない。最初からこうすればよかった。わたしはやりとげた。

卵焼きは技量

まぁ、当然のことながら、一朝一夕で出汁巻が作れるようになるわけがない。Youtubeでなんども動画をみても、実践にはあまり役に立たない……。火加減やら、卵を入れる量やらは、動画みてもよくわからない。出汁巻が上手い人に教わるのが一番だな、というのが5回ぐらい出汁巻にチャレンジしてみての感想だ。というわけでマンツーマンで3時間ぐらい出汁巻教えてくれる講師募集しています。

で締めるのも味気ないので、だいたいいままでにチャレンジした所感を記しておこう。

・油はかならずひく。多めにひく。シーズニングしたばかりの卵焼き器ならなおさらだ。とりあえず油を潤沢に引いておけばくっつかない。

・形は多少崩れてもリカバリが効くので、きにせずやる。リカバリできないぐらいにくずれてしまったら、スクランブルエッグだとおもって食べる。

・少しでもくっつくようになってしまったら、一回洗ってシーズニングをやりなおす。それをしないとまた同じところがくっつくようになる。

・火が弱すぎると卵がくっつきやすいので、そこそこ強い方がよさそう。ただし、卵焼き器の横から火が溢れるのはなんか怖い。

注記、その他

そいえば、昔どうしてもタンポポオムライスにのっているオムレツが作りたくて仕方なかった。当時はガスコンロだったので、熱心に練習していた時もあるけど、なんども五徳に卵をぶちまけてしまい、結果コンロが壊れてしまうという惨事になった……。オムレツは完全につくるのを諦めた。

・出汁巻と卵焼きは別物。出汁巻は卵に出汁を加えるので、卵液がゆるゆるになって巻きづらいので技量が必要となる。巻く回数それなりに多い方がおいしい気がする。

・卵焼き、出汁巻、最初に作り始めた人は狂気だなとおもう。専用器具がいるし、だれが考え出したんだろう……。

・卵焼き器の画像はAmazonから拝借した。実際わたしが購入したのはここのメーカーだ。

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