月光密造のクーデターテープ
慣れてくれば月灯りだけでも十分に歩いていける。それに今日は満月だ。僕が持っているなかで一番頑丈な靴を履いてきたし、ずっと歩いても暑すぎないくらいの重ね着、頭にはタータンチェックのハンチング、完璧だ。
立ち止まって空を見上げる。あの子も月を見ているだろうから月にはあの子の顔が映っていて、あの子が見上げている月には僕の顔が映っているのだ。だから怖くないし、不安なんて何一つない。
僕は背中のリュックを後ろ手に触って、その中でガチャガチャと鳴っている瓶たちを大人しくさせようとする。丈