FAG計画

FAGとは、Free Art Gallerysの略称。

昔の話。友人の不動産営業に、社員寮で貸していた小さめのビルが丸空きになるからその後の利活用案は何かないかと相談され、その時に考えたプランがFAG計画だった。

物件の所在地は新宿区大久保あたり。都心で利便性は良かったがどちらかというとマイナーイメージが強めのエリアだった。建物は少々古めでクラッシックな雰囲気。ただの居住用スペースとして利用するには競争力に欠け、便利いいからそこに住むという説得材料には難あり。逆にそこに行くことに意味を持たせる物件を演出した方がいいと考えた。

当時「デザインフェスタ」というイベントが人気を博していた。さっきネットで調べたらvol.51とか書いてるから、年二回開催していたとして25年くらい続いているイベント。原宿の少し裏手のビルに事務所があって、事務所というかビルごと事務所だった記憶が。ビルの外壁には鉄パイプが無数に組まれていて、一階にはカフェバー、各フロアーには展示室があった。そこの女性代表、名前なんだっけな…アフロヘアでやたら貫録を感じさせる女性だった。詳細忘れたけど…取材の一環で一度お会いしたことがあった。

デザインフェスタ事務所みたいなのあると面白い。

ビル丸ごとをアーティストに貸せばいいと考えた。

クリエーターに格安で賃貸。住居兼アトリエとして使用。各部屋の入口横には展示スペースを作り作品を常時展示する。ビルを訪れるゲストは、各フロアーを歩くことでいろんなクリエイターの作品に接することができる。お気に入りの作品があれば、ギャラリーに入りさらに作品を堪能。一階には共有スペースとしてカフェバーを併設。クリエーターとクリエーター、クリエーターとゲスト、ゲストとゲストの交流を活性化させ、コミュニティの拡大を狙う。FAGから巣立ったクリエーターが世界的なアーティストに成長。そしてFAGは、世界のアーティスト誕生の地として語り継がれる。

何もない空っぽのビルにクリエーターが住み着き、アートが生まれ、ファンがやってくる。空っぽのビルはアートのビルになり、ビルのあるその地はアート聖地となる。

こんなFAG計画だった。

FAGが盛り上がり、周辺が盛り上がり、街が盛り上がり、都市が盛り上がり、日本が盛り上がる。そしてアートで幸せな人が溢れる。

まーまー提案書が出来上がった頃、友人からその物件の売却が決まったって連絡があった。

私…いろいろ考えていたのに…

それがきっかけで友人と少しだけ心の距離が離れた。

一人では何もできない。 「助けて」って言えるともう少し楽に生きれるのに なかなかその一言を口に出せない。 ここでは私の正直な言葉をつづっていきます。 面白いと思ってもらえるだけでも嬉しいですね。