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「さっちゃんのまほうのて」両親の深い愛情とさっちゃんの勇気に感動!

先日、娘の歯科検診に行ってきました。
診察までの待ち時間、何気なく手に取って読んだ絵本に、思わず涙があふれてきました。

それは「さっちゃんまほうのて」という題名の絵本です。
生まれつき右手に先天性四肢欠損という障がいを持って生まれてきたさっちゃん。

実際に、先天性四肢障害に関わっている方々が制作された絵本は、歯科の待合でちょっと読んだ私の胸に迫り、何度も読み返したい本の1冊になりました。
子どもから大人まで読んでいただきたい絵本だと感じましたのでご紹介します。

「さっちゃんのまほうのて」について

「さっちゃんのまほうのて」は絵本作家である田畑 精一(たばた せいいち)さんと「先天性四肢障害児父母の会」の野辺 あきこ(のべ  あきこ)さん、志沢 小夜子 (しざわ さよこ)さんの共同制作です。1985年10月に偕成社から出版されました。

「さっちゃんのまほうのて」のあらすじ

さっちゃんは、幼稚園のおままごとで、お母さんになりたかったのです。さっちゃんのお母さんのお腹の中には、もうすぐ生まれる赤ちゃんがいます。
お母さんのお腹に抱きついたときに「わたしもお母さんになる」と決めました。

でも、おままごとでおかあさん役をするのは、いつも、背が高い子と決まっています。
さっちゃんが通う幼稚園では、おままごと遊びが流行っています。
先生が「今日のお母さん役は誰ですか?」と子どもたちに尋ねました。
さっちゃんが、お母さん役をしたいと立候補すると、友達に「さっちゃんは、おかあさんになれないよ。だって手のないお母さんなんて変だもん」と言われてしまいます。

さっちゃんは生まれつき先天性四肢障害で右手の指がなかったのです。
悔しくて悲しくて感情が爆発するさっちゃん。さっちゃんは友達にとびかかり、エプロンを投げつけて幼稚園を飛び出してしまいます。

泣きながら、家に帰ったさっちゃん。
驚くお母さんに、「どうしてさちこの手はみんなと違うの?どうしてみんなみたいに指がないの?」と迫ります。

お母さんはさっちゃんを抱きしめて「さちこの手はお母さんのお腹の中でけがをしてしまって、指だけできなかったの。どうしてお腹の中でけがをしてしまうのか、まだ誰にも分からないの」と答えます。

さっちゃんは「小学生になったらさっちゃんの指、みんなみたいに生えてくる?」と質問します。
するとお母さんはさちこの手を優しく包み込み、ごまかさずに、小学生になっても、今のまま変わらないことを伝えます。
そして「でも、お母さんの大好きな、さちこの大事な大事な手。かわいいかわいい手だから・・・」と励まします。

でも、さっちゃんの心は晴れません。
「いやだ、いやだ、こんな手いやだ」
そう言ってさっちゃんは泣きました。お母さんも一緒に涙を流します。

みんなと違うことに傷ついたさっちゃん。そのまま幼稚園にいけなくなります。

やがてさっちゃんの弟が生まれます。
父さんと病院に行った帰り道、「さっちゃん、指がなくてもお母さんになれるかな?」と恐る恐るお父さんに聞いてみました。

お父さんは、「なんだ、そんなことを心配していたのか。さちこは素敵な誰にも負けないお母さんになれるぞ。こうやって手をつないで歩いていると、とっても不思議な力がさちこの手からやってきて、おとうさんの体のいっぱいになるんだ。さちこの手はまるで魔法の手だね」
さっっちゃんはお父さんの言葉で辛い現実を受け入れる勇気をもらいました。

「さっちゃんのまほうのて」を読んだ感想

先天性四肢欠損という障がいを持って生まれてきたさっちゃん。
幼稚園のおままごとで、自分が人と違うことを自覚し、現実を受け止めることができません。

厳しい現実とたくさんの愛情を伝えるお母さん。
真剣に伝えるお母さんの気持を想像すると、胸がいっぱいになります。

この先どうなっていくのだろうかと、不安な気持ちで読み進めました。

さっちゃんは傷つきながらも現実を受け入れ、力強く生きようとします。
障がいを何とか乗り越えてほしいと願う両親の深い愛情と真摯な言葉。

ありのままの自分を受け入れるさっちゃんの勇気に感動しました。

幼稚園を休んでいるさっちゃんを気遣い、訪問する友達や先生。きっと子供たちも、さっちゃんを通して障がい者への理解を深めていくでしょう。

「さっちゃんの手は魔法の手」というお父さんの言葉は、さっちゃんにとっては魔法の言葉だったでしょうね。
さっちゃんはきっと強くて優しいお母さんになれると思いました。

まとめ

絵本「さっちゃんのまほうのて」をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

調べてみると、この絵本は「赤い靴児童文化大賞」を受賞したロングセラー作品でした。

絵本作家の田畑 精一さんは、89歳で亡くなられました。田畑さんはこの絵本の執筆を依頼されたときに受けるべきか迷ったそうです。
実際に子ども達や保護者と交流し、障がいを持つ子供をしっかり受け止める父母の愛情を知り、「明るく希望を抱ける作品にしよう」と決心したそうです。

友達の言葉に傷ついても、障がいを受け入れ、立ち上がっていくさっちゃん。
読んだ後、爽やかな気持ちになれる感動的な絵本です。
子どもにも読み聞かせたいと思います。


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