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大阪府市の広域一元化条例案のボロボロぶりとその致命的欠陥とは        ― 世界の地方自治史に残る大恥 ―

条文そのものについてはHPからダウンロードしご覧ください。以下に大阪府市の広域一元化条例案について、私見を述べます。

第1条(趣旨)について、普通は(目的)ではないかと思うがそれはともかく、「大阪の成長」の「大阪」とは、一般に大阪府下市町村のうちすべてをそう呼称すると思われるが、もし大阪市だけを大阪としているなら一般的でない。したがって、もしこの条例においては大阪市だけを大阪と呼びたいなら、当然別途定義が必要となる。

第2条(基本理念)について、一般には第1条に入れ込んで(目的)として整理しすっきりまとめるのが一般的ではないか?だから第1条と第2条を分ける意味が分からない。が、それはともかく「一体的な行政運営」(?)→「二重行政」(?)→「大阪の成長及び発展」(?)→「副首都・大阪」(国に諮らず勝手に「副首都」?)→「豊かな住民生活」(なんで豊かになれるのか?)の文章の流れに関し、ひとつひとつの言葉の意味が不明確であり、したがってそれぞれに因果関係が推測できないから論理的につながらず、意味するところがわからない。というよりでっち上げ感がムンムン漂っており不快ですらある。知事・市長は大阪府・大阪市の住民がこの不快感を感じないと思うのだろうか?

第5条(会議の組織)について、「会議」の「組織」は日本語が変。「会議の構成」又は単に「組織」にしたほうが良いのでは?日本語は大丈夫か?

第6条(会議の運営)について、議決に関する規定がない。大阪府市会議には意思決定がないということになるが?第7条の「合意」だけならそもそも会議が必要なのか?

第7条(進捗状況の管理)について、「合意」とは誰が当事者でいつ時点のどのような態様・状態をいうのか?全会一致ということ?知事と市長の合意ということか?きちんと規定しなさい。数少ないここまでの条文でさえド素人感が連発されている。うんざりする。

第9条(府及び大阪市が会議において協議すべき事項)について、普通は簡単に(協議事項)と表記すればすむし、第1号「今後の大阪の成長及び発展に関する取組の方向性」の「取組」は普通「取組み」と表記すると思う。が、それはともかく「大阪」の意味が第1条同様に意味不明。もし一般に考えられているとおり大阪府と大阪府下市町村を意味するなら、これを大阪府知事と大阪市長だけが会議で決めてよいわけがないだろう。馬鹿なのか?

第10条(府及び大阪市が一体的の取り組む事務等)について、第3項の大阪市から大阪府への事務委託の規定に関し、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」(橋下知事(当時)〈2011年6月29日大阪市内で開いた政治資金パーティーにおける発言〉)のがこの条例の真の目的だから、この規定がこの条例の胆であろう。ところがこの規定に致命的欠陥が存する。以下のとおり地方自治法から順番にご説明する。

〔地方自治法〕

第252条の14(事務の委託)について、第1項の規定により、普通地方公共団体は協議により規約を定め他の普通公共団体に事務委託できる。ただし、この場合には第3項の規定により、第252条の2の2第3項「本文」の規定が準用される(ただし書きは準用されない)。

第252条の2の2第3項「本文」では、同条第1項の「協議」について関係普通公共団体の議会の決議を求めている。第1項は「協議」により規約を定め協議会が設置できると規定している。注目は協議設置以前の段階である「協議」について議会決議を必要としている点だ。

〔要するに〕

事務委託をするには委託前の「協議」段階で府議会決議と市議会決議を経なければならないところ、第10条第3項の規定は両議会決議を経ずにあらかじめ規定する形となっている。もし議会決議の規定を盛り込み整理し直す等をしなければ、規定の存在自体が地方自治法第252条の14第3項違反となろう。実は、地方自治法が議会決議を求める規定を置いているのは、地方自治の本旨のひとつ「住民自治」(当該地方公共団体の住民の意思による自治)に反し違憲となることを避けていると考えられる。とすれば、当然、広域一元化条例も地方自治法違反であると同時に違憲でもあるという致命的欠陥を有するものになる。

〔さらに〕

そもそも事務委託そのものにも問題がある。権限・財源のある政令指定都市大阪市が大阪府に事務を委託する理由がない。2020年11月1日住民投票で否決された大阪市廃止・特別区設置の代わりに大阪府が大阪市の権限や金をむしり取るのが真の目的と思われるから、事務委託そのものが公序良俗に反し違法性があると思われる。したがって、委託行為自体が無効なのではないかと考える。

【総評】

たった10条しかない条例案なのに中身がボロボロである。おそらく法案作成の素人が、憲法、地方自治法、法律行為等の法令の基礎も知らずに作成したものであろう。問題外の代物である。しかも、住民投票結果が示す民意を完全に無視している。大阪市民をないがしろにするな。こんなものを議会で通したら大阪府・大阪市は地方自治史に残る大恥を世界に示す。

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