大阪府市一元化条例案に関し総務省に提出した意見

現在大阪府、大阪市において議会に上程されようとしております府市一体化条例案につきまして、地方自治体には条例制定権(地自法14条1項、憲法94条)がありますところ、当該自治体が他の自治体の権限を行使し財源を支出する規定を定めることはできるのでしょうか。自治体の組織と運営については「地方自治の本旨」に基づき地方自治法が制定されました(憲法92条、地自法1条)。とすれば、地自法全般にわたって地方自治の本旨に基づくことを要請されていると解するのが相当です。したがって、地自法14条1項の条例制定権についても、地方自治の本旨に反する範囲にまで及ぶと解することはできません。地方自治の本旨とは、国から独立した当該地域を管轄する地方自治体による、当該地域住民の意思に基づく自治をいいます。さて、当該条例案は、大阪市の一部財源・権限を大阪府に移管するものです。つまり、大阪市とは管轄地域を異にする大阪府が大阪府民の意思により、大阪市の一部権限を行使し一部財源を活用するものです。当該条例案は地方自治の本旨に真っ向から反し同条同項の条例制定権の濫用として違法と解すべきです。また、憲法の観点からみると、憲法94条の条例制定権について、地方自治の本旨に反する範囲のものにまで及ぶと解することができるでしょうか。この点92条において、自治体の組織及び運営について「地方自治の本旨」に基づく法定を求めています。とすれば、当然、94条においても同様に地方自治の本旨に基づくものを求めていると解すべきであり、条例制定権が地方自治の本旨に反する範囲にまで及ぶことまで憲法が予定していると考えるのは相当ではありません。以上から、地方自治の本旨に反する当該条例案は、憲法94条の条例制定権の範囲を超えるものとして違憲、無効と考えます。総括しますと、上記検討は「ある地方自治体が、当該自治体の条例によって他の自治体の権限等を奪うことなどできるばずがない」という社会常識の法的な整理を企図するものです。このような条例案を上程しようとする大阪府、大阪市の暴挙は、我が国の地方自治における醜態を他に晒すものであり到底先例に残せません。そこで、総務省に対する要求事項としまして、最後に大阪府及び大阪市における地自法14条1項違反案件に関し、同法245条の4~245条の8のいずれかの関与を実施されることを強く求めます。

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