95、アメリカ人とアメリカ

1963年にケネディ大統領暗殺事件を国際テレビで視聴出来るようになり
偉大な将来性ある若いリーダーを失った国民たちが感涙にむせんでいた。
近代日本ではリーダーを失った国民が涙するなど考えられない事だった。
ちなみにぼくの渡米後11人の大統領が変わった、日本の首相は数が多すぎ
数ヶ月で女性関係がバレて交代した例もあり覚えたくもない。

第二次大戦後アメリカは多くの退役兵の為にレビットタウンという安価な
住宅を増産建築し、住まいに必要な冷蔵庫、洗濯機、テレビなど文明の
利器を備え、自家用車など裕福な生活が可能になりそのイメージは世界に
広がって世界中からアメリカへと人々を向かわせた。アメリカの文化、
芸術面も世界の中心となり世界各国の人々が集まって行った。

ぼくもレビットの住宅を購入した1人で1972年に2区画, 750坪の角地に
2階建て5LDKが当時3万2千ドルだった ($1=360円) の我が家を購入した。
ただ、NY中心部マンハッタンから東へ100キロ余、通勤時間は片道で
2時間ほどかかった。大雪の時は半日かかって帰宅した事もあり、
古い電車もあったが、やはり2時間ほどかかりトイレは線路の真ん中に
垂れ流しで乾いたウンチが山盛りだった。時には走ってくる乗客がいて、
車掌は「今日は2分早く出た」などと呟いていた。

しかしこのアメリカの裕福さは経営陣と従業員の報酬の比率が50年前の
約20倍から2013年は300倍近くまで広がっている。貧富の差は巨大化し、
アマゾンの創業者ベゾス氏ら富裕層の納税記録は連邦所得税の支払額は
たったの136億ドルである。上位25人の合計保有資産は2014年~18年に
約4010億ドル (約43兆円)しかし連邦税の支払額は14億ドルで真の税率
は1.1%にすぎない。著名投資家ウォーレン・バフェット氏や、米メディア
のマイケル・ブルームバーグ氏、テスラのイーロン・マスク氏ら上位25人
の合計も富の増加分に対する税金支払額の比率は3.4%である。
これはスポーツ界のスーパースターらにも言える。アメリカのスポーツ界
の1試合優勝金額は日本の賞金王の1年分にも匹敵する。ゴルフ界、野球界、
テニス界、アメフト界も同様であり彼らは税金を払うよりも慈善活動に
寄付して免税とするのである。税金を払わなければ金持ちになるのは当たり
前で税率が高い被害者は常にどこの国でも中間層や低所得者層である。

話が少しずれてしまったが、1964年からLBジョンソン大統領による
ベトナム北爆により多くの若者が徴兵され、空手の生徒達は泣く泣く兵役に
ついた。大学生でも成績の悪い者は兵役免除もなく、嫌々従って行った。

この年は東京オリンピックが開催され戦後の復興を願って大成功を納めた。
この1年前に開かれたNY世界博があり1年継続決定後ぼくはその日本館で
空手の日本武道紹介の演武で渡米した。イギリスからはビートルズが狂乱
の如く現れ、ボクシングのアリの出現などアメリカを象徴するイベントが
開かれた。マリリン・モンローやプレスリーの黄金期でもあった。

1969年にはベトナム反戦の動きがNY北郊外のウッドストックでロック
カルチャーを象徴する大イベント、ロック・フェスティバルが予想以上の
大反響を呼び3日間で40万人の若者達を狂気させた。そこには後に
ノーベル文学賞を受賞するボブ・デュラン、ジョーン・バエズ、サンタナ、
ジェファーソン・エアープレーン、そしてジミー・ヘンドリックスなどが
ボランティアとして公演した。ぼくの友人達は参加したがそこは大麻だらけ
で警備の警官さえも深呼吸しながら見回っていたと聞く。

ベトナム戦争はその後1973年のパリ協定でニクソンはベトナムから撤退
させ。1975年サイゴン陥落によって終戦となり徴兵制度も無くなった。
ぼくの友知人のエディ・アダムスはベトナム人を間近で頭を銃で撃つ写真
でピューリッツアーを受賞したが,アメリカ兵総数は900万人,戦死者50万人,
ベトナム民間人死者は200万以上だという。ベトナム戦争はアメリカ歴史の
汚点だが、その後遺症として退役兵による麻薬、銃の氾濫が全国に行き
渡って行った。1950年代はウエストサイト物語で見るように若者達の争い
は銃ではなくナイフが主流だったが、ベトナム戦が全てを変えてしまった。

その後遺症か、現在アメリカには3億丁とも言われる銃による死者数は毎年
4万人近く、日本は2017年には6人だった。それもヤクザに絡む事件である。
これだけの死者数があり、銃規制強化が呼ばれる社会でありながら、
ハリウッド映画やゲームなどリアルな銃による殺し合い、陸海空をふんだん
に使っての爆発、チェース、銃撃場面だらけであり、売れるからと言って
子供達への影響は考えないのか、全くの矛盾を感じるのだ。

日本人が良く知るアメリカの歴史はカウボーイの西部劇映画からの知識が
多いが、全て銃から始まっていると言っても過言では無い。
1861年から約5年間アメリカでは人種問題で南北戦争が勃発した。
アメリカ人同士が殺し合い、死者総計は70万から90万人と言われる。
皮肉な歴史は南北戦争終了後、日本の明治維新を成功させたのは南北戦争
で使われた中古銃が官軍で使用された。第二次世界大戦のアメリカの
総死者数は29万人とあり、日本人は230万人であった。結局アメリカの
南北戦争はアメリカ人同士が争った故に歴史上最多の死者数になった。

アメリカの歴史は銃と病原菌で始まり免疫がないインディアンの多くが、
白人の持ち込んだ疫病で死んだが、先住民族ワンパノアグ族の土地を奪い、
女や子供を奴隷として売り飛ばし民族を壊滅させた。

大量殺人史を調べると1位は文化革命を起こした毛沢東であり6,000万人、
2位はソ連のスターリンで2,000万人、3位はヒットラーの1,100 万人、
内ユダヤ人は600万人がガス室で大量虐殺された。4位がカンボジアの
ポルポトの300万人と汚れた歴史が記録されている。
世界で大国と呼ばれる国は、中国は異なる生活、主義、宗教、言語の違い
を持つ56民族があり人口は14億5千万人、インドは13億5千万。ロシアは
190の民族があり人口は1億5千万。アメリカは原住民インディアンの多く
は白人に土地を奪われ虐殺された。現在アメリカの人口は3億3千万人。
多くの民族がある大国はそれらを一つの法律で纏める事は非常に困難であり、
故に大国ほど混乱が生じる。白人だけでも他国人種と宗教の違いがあり、
最近ではアメリカでアジア人へのヘイトが問題になっている。

イギリスの歴史は1625年キングジェームズによるアイルランドの囚人達を西インド諸島の島々に奴隷として売られ、イギリスの商人にとって彼らは最大の収入となった。1600年代半ばの奴隷の大多数は, 実は白人だった。アメリカへ逃れたイタリア人やユダヤ人も当時は白人と見なされなかった。イギリスはオーストラリアのアボリジニ民族を野獣のように狩りをしたり人間の肌でランプシェードを作ったりもした。イギリス産業革命の裏には世界中の汚点が積み重なっている。

ぼくのアメリカ好きは「大らかさ、明るさ、自由さ」などで、日本への理由は
「勤勉さ、真面目さ、道徳観、自然への敬愛など」と同格だが、現在のアメリカ
の現状は1960~70年代のアメリカとは大きく異なり、ネガティブ面が拡大して
いるのは否めない。特に日本と違うのは大惨事が起きた後の暴動や店の盗み、黒人
やアジア人への人種差別、銃による殺人などアメリカから銃が一掃なれば変化する
かも知れないが。現在の中国やロシアの政治状況を見ると困難さは非常に厳しい。
銃や各種の差が無い大好きなアメリカに戻って欲しいと願う。

終。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?