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あの狐のさがしもの

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あの狐のさがしもの(前編)

*****あらすじ 壱・あやかしとハザマの世 高久翔利が目を覚ますと、辺りは無に包まれていた。確かに目を開けたはずなのに、真っ白のような、真っ黒のような……まるでまだ目を閉じたままのような、何もない世界に翔利はいた。 『……て。目を開けて』 「ん……」 白い闇の中、初夏の風鈴のように柔らかく澄んだ心地よい声が響く。頭の中に直接注がれるような不思議な距離感。 『よかった。もう大丈夫ね』 ゆっくりと立ち上がると、足元さえも無だった。足裏に伝わる感触がない。無重力という

あの狐のさがしもの(後編)

参・おっさんとポニーテール 目的の旧取水施設は広い疏水公園の中にあり、那須野が原の開墾の礎となった施設。現在はその役目を終えて、木々に抱かれひっそりと佇んでいる。すぐ近くには現役で那須を潤す西岩崎頭首工も見える。鉄筋の赤が青空と緑の山々に囲まれ、良く映えて美しい。 翔利たちが着くと普段は川底が見えるほど透明で穏やかな那珂川が、台風の影響で濁った水を貯え、轟々と唸りをあげていた。水位も、プリントの写真にあるよりかなりあがっているようだ。 「ああ、懐かしいわね。私が見たのは