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人生羈旅

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旅から得た学び
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#旅エッセイ

恵みの稲妻

激しい雨音のなか、突如として部屋が真っ暗になる。 さっきの落雷で停電したらしい。 窓の外が白く光った。一瞬テレビやソファの見慣れた輪郭が暗闇に浮かび上がる。ほどなくして、大岩を砕くような、かまびすしい雷鳴が湿った空気を揺らした。 都会に住んでいると、夏の激しい雷雨は災難だと感じることの方が多い。ちょっとした非日常感と高揚はあるけれど、不便がそれらを凌駕する。服や荷物は濡れるし、しばしば停電するし、落雷や大雨が本当に災害を引き起こすこともあるから。 でも生きる場所が違えば、

私が星の旅人だった頃

発熱で丸2日寝込んだ。 しかし寝返りを打てないほどに痛む身体より、放り投げてきた山のようなタスクを思い出すことの方が苦しかった。 徐々に引いていく熱に代わって、もう出社したくない...という思いがどんどん自分を蝕む。 「会社に行きたくない、月曜日までにどうにかして地球が滅亡しますように」と心から祈った。 人生の大半を費やす仕事に全力であることは「善く生きること」だとされている。もはや「人生≒仕事」であるという思想を目にしない日などなく、自己啓発本、電車の吊り広告、SNSや動