あなたと出会えて私らしく生きられるようになったー小松未歩「あなたのリズム」

はじめに

こんにちは、2000年前後のbeing作品の歌詞の解釈について書いている「品川みく」です。

今回は、twitterで進行中の小松未歩「あなたのリズム」(1998年)について語る企画に乗っかってみます。

この曲、リリースされた23年前は一曲全体を貫くひとつのストーリーを思い浮かべることができませんでした。けれど、いくつかの鍵を使うことでこの曲を読み解くことができるようになってきました。

初期作品にときどきあった、勝ち気な主人公像

小松未歩の初期作品の主人公像には、ときどき男性を手玉に取るような勝ち気な女性が描かれることがあります。「最短距離で」が典型例でしょうか。「言い寄る男達気取ったって無駄よ今度ばかりは」などと、男性が何人も寄ってくるような魅力的な女性。「駆け引きなしで愛せるのはあなただけ」…ということは、裏を返せば「あなた」以外の男性とは恋の駆け引きを楽しんでいた強かな面があるんですよね。

その前提に立つと、謎だった1番メロのストーリーも見えてきます。

「心の通わぬ会話から欲しい物強請る」というのは、「あなた」と出会うまでの歌い手女性の恋愛を振り返っています。
歌い手はすごく綺麗で魅力的ですが、どうもこの世を面白くないと思っています。
言い寄ってくる男性もとりあえず退屈しのぎになりそうならと付き合って、欲しい物をねだっていたりしたけれど、心を通わせることはなかった。そんな付き合い方をいつまでも続けていてはいけないと思っていたから「神様ちゃんと罰を(自分に)下してよ」と自分自身を客観視もしていたのでしょう。

でも、あなたと出会って世界の見方ががらっと変わりました。「リズム」とは生き方を指していて、「あなたのリズムで私は踊れる、歌える」とは、あなたの生き方に沿う形で私は生きていける、という意味でしょう。

あなたと出会えてから「朝日も夕陽も美しいと思える」ようになった。だから、「世界」という言葉は、あくまで「自分にとっての世界」。「朝目が覚めたら世界中の秘密握ってて」は、昨晩あなたに向かって話した自分自身の過去の全て(=世界中の秘密)はあなたの胸に留め置いていて、という意味だと私は解釈しています。

他人の評価など気にせずに

では、「あなたのリズム」はいったいどんなものだったのか、その一端が2番メロに描かれています。2番サビの歌い出しは「そんなあなたのリズムは」なので2番はあなたの価値観について書かれているものと解釈するのが自然です。

歌い手の主人公は勝ち気な性格でありながらも、その実、他人、特に男性からの評価によって自分自身を量っていたところがありました。だから「自分以外の誰もが皆輝いて(自分を持っているように)見えて」、あなたに対して弱音を吐いたのでしょう。そんな歌い手に「あなた」は「嫉妬み誹られるくらいなら孤独の方が100倍まし」と説きます。他人がなんと言おうと自分は自分と一匹狼を貫く「あなた」の姿を見て、「自由って実はこんなもんだね」、他人の評価を気にせず私らしく生きればいいのだと、自分自身の人生を生きられるようになっていくのです。

おわりに

小松未歩の曲の歌詞は抽象的なものや一見脈絡がないように思えるものもあり、1曲だけでは意味を取りづらいものも多くあります。しかし、100曲あまりの全体像の中から共通する「カギ」を見つけていくと、ぼやけていたストーリーの輪郭が浮かび上がってくることもあります。

これが正解かはわかりませんが、このような解釈をすれば一応、ひとつのストーリーとしてつながります。
あなたはどのようにこの曲を聴いていましたでしょうか。ひとりでもふたりでもこういう話を面白いと思ってくれる人がいたら、ぜひコメントをいただけると嬉しいです。あなたのコメントがまた新たな「カギ」になり、まだまだ小松未歩の世界を探索することができるのです。